「おもちゃメーカー」が台湾有事のカギを握る? 日本企業に必要な危機感
部品も全て「台湾製」
サンダータイガーのドローン製品のもう一つの特徴は、完全に台湾製であり、中国製の部品を一つも使っていないことだ。中国が販売する部品は「レッド・コンポーネント(部品)」などと呼ばれており、サンダータイガーはそんなレッド部品を完全に排除している。 言うまでもないが、台湾は近年、中国との有事を見据えて厳戒態勢を敷いている。通信関連製品でレッド部品などを使うと、有事の際に中国側がリモートコントロールで不具合を生じさせるかもしれないし、部品の調達などでスパイ工作が入り、台湾側の手の内が把握されてしまう可能性もある。 さらに台湾は米国政府とも協議しており、自爆型ドローンを大量に米国から調達することになっている。国産のサンダータイガーのみならず、価値観を共有する米国などからもドローンを入手する。 台湾国防省は、10月に入り、サンダータイガーのドローンの試験導入を急ピッチで進めている。というのも、台湾政府にはゆっくりしていられない理由がある。台湾周辺で中国による挑発的な演習などが行われているからだ。2023年8月には、中国軍のドローンが台湾を取り囲むように飛来したり、台湾の北東部空域などにドローンが侵入したりするケースもあった。台湾の離島である金門島でも、中国からドローンが飛来して、ビラをばらまいていくという事件も起きている。
ドローンによる「紛争」は始まっている
米テック誌「MITテクノロジーレビュー」は、このように指摘している。「シンクタンクの新米国安全保障センター(CNAS)による新たな戦争シミュレーション実験によると、台湾と中国の間で将来起こり得る紛争は、先進的な水中ドローンや、高度な自律テクノロジーを駆使したドローン戦が中心になる可能性がある」と。 最近の動きを見ていると、中国はすでにそのドローンによる「紛争」を開始していると言っていいだろう。 中国の人民解放軍は、50種類以上の多彩なドローンを所有しており、有事の際には確実に戦力として動員する。ちなみに米国は1万機以上の大小のドローンを導入し、「世界最大かつ最も洗練されたドローン軍」を所有しているとされる。日本も、2025年度予算で攻撃型ドローンの購入費などで1000億円以上を概算要求している。 世界の民間ドローンのシェアを見ると、DJIなどの中国メーカーが支配しているのが分かる。一方で、日本や欧米などの国々では、こうした中国製のドローンのみならず、レッド部品を含む機器を使うことへの懸念がどんどん高まっている。国防費が急増している日本でも、防衛産業などでレッド部品を使わないようにしていかないと、防衛体制が不十分になる可能性があるが、実際はその意識がまだ不足している。ビジネスとしてみれば、ドローンも部品も、安く調達するのが正しい判断だからだ。 だがその意識は、防衛や安全保障では通らないこともある。日本は台湾を見習って、国の支援などによって、防衛産業に少しでも関わる民間企業に自覚を持ってもらうように働きかける必要があるだろう。さもないと、次世代の日本を守れなくなる可能性がある。 (山田敏弘)
ITmedia ビジネスオンライン