じぇじぇじぇ!岩手県・久慈 21世紀枠候補 「あまちゃん」聖地から“聖地”目指す
日本高野連は13日、第97回選抜高校野球大会(来年3月18日から13日間、甲子園)の21世紀枠候補9校を発表した。東北地区は13年にNHK連続テレビ小説で放送されたドラマ「あまちゃん」の舞台として知られる岩手県久慈市にある久慈が選出された。出場2校は一般選考の30校とともに、来年1月24日の選考委員会で決定する。 「あまちゃん」の舞台として知られる久慈市に寒さを吹き飛ばす吉報が届いた。候補9校発表後、午後3時過ぎに伝え聞いたエース左腕・宇部奨人(2年)は「じぇじぇじぇ!」と普段は使わない方言で歓喜。ブルペン投球に熱が入り、腕を振るたび白く蒸気が上がった。 「地域の皆さんに元気、勇気を与えられたらいいなと思います。後悔しないように一週間、一日、一秒を大切にしたいです」 79年夏(1回戦敗退)以来2度目の甲子園出場を視界に捉えた。毎年、生徒の約半数が国公立大に合格する勉学に加え、野球の好成績も評価された文武両道校だ。秋は岩手3位に食い込み、東北大会は2回戦敗退ながら初戦で福島の強豪私立・学法石川を撃破した。 エース・宇部奨は中学時代に全国大会で準優勝した久慈市選抜チーム「久慈DREAMS」出身。ともに久慈に進んだ内野手の宇部智也主将(2年)とともに「私立に勝って甲子園に行こう」と周囲を熱心に勧誘して、選抜チームの20人中14人が久慈に入学してきた。最速134キロも巧みな投球術を駆使し、固い絆で磨き上げた守備力で接戦を守り勝つチームカラー。選抜に選出されれば「あまちゃん」のように旋風を起こす地力がある。 「あまちゃん」の放送終了から11年。主人公の天野アキを演じたのん(31=旧芸名・能年玲奈)は22年から久慈市の応援マネジャーを務めるなど同市との絆は不変だ。当時は幼稚園年長だった宇部奨は「毎日(あまちゃんの放送を)見ていました」と言う。同校OBの大畑伸悟監督は、東京の高校に赴任時に、帰省の際に脚本の宮藤官九郎に会ったことがあるという。高橋琴子マネジャー(2年)は小学生の時にお祭りのイベントでのんを目撃したことが自慢で「のんさんは出身じゃないのに久慈を大事にしてくれる。良い報告ができたら」と笑みを浮かべた。 「あまちゃん オープニングテーマ」は、いまや甲子園のアルプスでも定番の演奏曲となった。久慈のここぞのチャンステーマは、もちろん同曲。1月24日に選出を果たせば、甲子園に本家のメロディーが響く。(柳内 遼平) ▽21世紀枠 甲子園への出場機会を広げるために01年の第73回大会から導入。練習環境などのハンデ克服や地域貢献など戦力以外の要素も加味する。秋季都道府県大会16強(加盟129校以上の場合は32強)以上を条件に、全国9地区から1校ずつ候補として推薦。今春選抜から1減の2校となり、東西関係なく選ばれる。最高成績は01年宜野座(沖縄)と09年利府(宮城)の4強。 ≪今も久慈市と縁≫のんと久慈市との縁は「あまちゃん」だけではない。20年には同市でロケを行った映画「星屑の町」に出演した。22年には同市の「第2のふるさとプロジェクト」の応援マネジャーに就任し、フリーペーパーやポスターで観光地、地域の伝統食を紹介する「くじのん~久慈のんびり旅」で継続的に魅力を発信中。また、自身のYouTubeチャンネルでも久慈を観光する動画などを配信している。 ▽あまちゃん 13年4月1日から9月28日まで放送されたNHK連続テレビ小説。宮藤官九郎が脚本を手掛け、能年玲奈(現のん)演じるアキが、母の故郷・岩手で一人前の海女を目指して奮闘。その後、町おこしのご当地アイドルから上京し、本格的なアイドルとして活躍する姿を描いた。東日本大震災にも正面から挑み、方言で驚きを意味する「じぇじぇじぇ!」が同年の新語・流行語大賞を受賞。最高視聴率は関東地区で27.0%、期間平均は20.6%。小泉今日子、宮本信子、橋本愛らが出演した。