「国境通信」オクラの栽培がスタート しかし”目の前が真っ暗”に…支援とビジネスを両立する難しさ 川のむこうはミャンマー ~軍と戦い続ける人々の記録#7
宿題残したまま、日本に一時帰国
実は、私はこの日のうちにバンコクに戻り一旦日本に帰国しなければならない事情があった。企業の担当者も次の予定があるとのことで、現地を離れた。企業側と今後の方針について話し合う時間が取れなかったこともあるが、この状況をアインにどう説明すればいいのか、考えがまとまらず、詳細を伝えられないまま皆に別れを告げた。アインは、私と担当者との会話の様子から、なんとなくトラブルのにおいを感じ取ったような顔をしていたが、最後はいつものように「また会いましょう」と笑った。 オクラの収穫が始まるまで、待ち遠しいはずの時間は、私のとっては果てしなく重い宿題の提出期限となってしまった。ようやく光が見えたと思った事業の行方は、まったく先が見えない振出しの状態に戻ってしまったようだった。 (エピソード8に続く) *本エピソードは第7話です。
連載:「国境通信」川のむこうはミャンマー~軍と戦い続ける人々の記録
2021年2月1日、ミャンマー国軍はクーデターを実行し民主派の政権幹部を軒並み拘束した。軍は、抗議デモを行った国民に容赦なく銃口を向けた。都市部の民主派勢力は武力で制圧され、主戦場を少数民族の支配地域である辺境地帯へと移していった。そんな民主派勢力の中には、国境を越えて隣国のタイに逃れ、抵抗活動を続けている人々も多い。同じく国軍と対立する少数民族武装勢力とも連携して国際社会に情報発信し、理解と協力を呼びかけている。クーデターから3年以上が経過した現在も、彼らは国軍の支配を終わらせるための戦いを続けている。タイ北西部のミャンマー国境地帯で支援を続ける元放送局の記者が、戦う避難民の日常を「国境通信」として記録する。