ハーレーダビッドソンが熱いファンを作る仕組み 直営販売店がなくても顧客との関係性を構築
関係性構築の視点からいうと、販売店との太い関係性構築を目指すディライトフル・リレーションシップと、直接顧客にハーレーの世界観を体験させ、経験価値を高めて関係性構築をする2本柱でした。当時まだネットもあまり発達せず、SNSなどのツールが全くなかった90年代に関係性マーケティングをしているのです。奥田マーケティングを一言でいうと、モノを売るマーケティングではなく、コトを創るマーケティングに徹したことでした。
■販売店とウエットな人間関係を構築 HDJは直営の販売店を持っていません。ハーレーの正規販売店は日本のオートバイ販売店のわずか1%に過ぎませんでした。その3分の2はハーレー以外のメーカーとの併売店で、しかも小規模な販売店がほとんどでした。 店主にはメールさえも使えない昔ながらの頑固な人も多く、データベース・マーケティングとかディライトフル・リレーションシップ・マーケティングとかに全く関心もありませんでした。聞く耳を持たなかったのです。これらの店主たちを奥井社長と営業部隊は、根気強く、ウエットな人間関係などのアナログと各種データの管理と共有というデジタルの両面で根気強くアプローチしていきました。
例えば、奥井社長や営業部隊は販売店の店員の結婚記念日や誕生日にメッセージやプレゼントを贈ったりして徐々に関係を重ねていきました。営業担当者は日々販売店の相談に耳を傾けてアドバイスを親身になってやっていきました。 商機を逃さず顧客にアプローチできるようにするため、それぞれの販売店やHDJでバラバラだった顧客情報を一元化して共有できるデータベースも構築しました。これらによってハーレーを扱っている販売店の売り上げが増えていきました。
面白いもので「HDJと関係していると儲かる」となると正規販売店とHDJとの絆はますます強くなっていきました。顧客データが正規販売店とHDJの間で完全に共有されました。 ■顧客との関係性構築の2つの柱 顧客との関係性構築は主に2つの柱があります。1つはハーレーを購入してくれた既存顧客や新たに購入した新規顧客に対してです。もう1つは潜在顧客に対してです。ハーレーを購入すると全員「LIFE STYLE BOOK」という冊子を受け取ります。そこには「ハーレー10の楽しみ」が書かれています。