木星の大赤斑を横切る太陽系で「最も赤い」天体、NASA探査機が撮影
火星は太陽系の赤い惑星として有名だが、最も赤い天体ではない。その称号を得ているのは、木星の小さな第5衛星アマルテアだ。この興味深いミニ衛星の珍しい姿を、米航空宇宙局(NASA)の木星探査機ジュノーが3月に撮影した画像が公開された。NASAは13日付の声明で、アマルテアを「太陽系で最も赤い天体」と呼んでいる。 【画像】木星と真っ赤な衛星アマルテア 今回の画像は、ジュノーが3月7日の近接フライバイ観測時に撮影したものだ。画像には、木星の最も有名な特徴の1つである大赤斑が写っている。大赤斑は長期間持続している巨大な嵐で、赤い色をしていることで知られている。画像のうちの1枚では、大赤斑の上にアマルテアが黒い点として見えている。アマルテアは半径が約84kmで、ジャガイモのような形をしている。木星に近い軌道を公転しており、公転周期は約0.5地球日(12時間)だ。 木星の荒れ狂う大気が、画像全体に写っている。市民科学者のジェラルド・アイヒシュテッドが、ジュノーのオリジナル画像の色調と鮮明度を補正処理した。NASAは、ジュノーの生画像データを一般の人々がダウンロードできるように提供している。NASAは「市民科学者を招いて、木星とその衛星の神秘と美しさを引き出し続けるための新たな画像処理方法を模索している」とジュノーに搭載された200万画素のカメラJunoCamのサイトに記している。 アマルテアは小さいが、特異な性質を持っている。赤色を帯びている理由の1つは、衛星イオからの硫黄による汚染である可能性がある。さらに、赤いだけでなく、太陽から受ける熱を上回る量の熱を放射している。この奇妙な熱の発生原因は、謎のままだ。「木星の強力な磁場の内側を公転しているため、衛星の核で発生する誘導電流が原因となっている可能性がある」とNASAは指摘している。「あるいは、木星の重力によって生じる潮汐応力に起因する熱かもしれない」
衛星アマルテアと探査機ジュノーの共通の運命
巨大ガス惑星とその多数の衛星を調査する任務を担ったジュノーは2016年、木星に到達した。正式に認定された木星の衛星は、アマルテアを含めて95個ある。木星の氷衛星エウロパは、生命の痕跡探しに適した場所と考えられている。NASAの次期探査ミッションのエウロパ・クリッパーは、氷衛星へのフライバイを実施し、詳細な調査を行う予定だ。エウロパは、木星の4大衛星の1つ。残りの3つは、イオ、ガニメデ、カリストだ。4つの衛星は、観測条件が良ければ、地上から双眼鏡で見ることができる。だが、アマルテアは探査機からでも見つけるのが難しい。 アマルテアは1892年、米天文学者のエドワード・エマーソン・バーナードが発見した。NASAの探査機ガリレオは1996年から数回にわたり、アマルテアの画像を撮影した。ガリレオの調査で、衛星の表面に衝突クレーターや谷のような地形があるのが判明した。 小型で赤色のアマルテアにとって、未来はそれほどバラ色ではない。「アマルテアは母惑星に非常に近いため、ゆくゆくは軌道が減衰し、惑星に落下する」と、NASAは解説サイトに記している。ジュノーもまた、いつまでも持ちこたえられるわけではない。太陽電池を動力源とするジュノーは現在、ミッションの延長段階にあり、2025年9月かもしくは寿命に達するまで、運用が継続される見込みだ。ジュノーは、アマルテアと同じ運命を辿ることになる。最終的には、木星の大気中で燃え尽きるのだ。その時が来るまでは、魅力的な惑星とその衛星を間近で探査し、宇宙ファンや科学者をあっと言わせ続けるに違いない。
Amanda Kooser