『悪魔と夜ふかし』デヴィッド・ダストマルチャン インタビュー 悪魔の実を持つ男の演技アプローチ
映画監督同士をつなぐ
――ジャック役を演じるため、具体的に役立った個人的な経験はありましたか? 以前、自分のコミックを宣伝するためにオンラインイベントを企画したことがありました。ホラー界のクリエイターやファンがたくさん集まってくれましたが、当時の僕は、コロナ禍の大変な時期に家族を守るため、大きなストレスや不安に対処していたんです。その頃、母が突然亡くなったこともあり、個人的なつらい感情を抑えながら、公の場でイベントを進行するのはきわめてつらい経験でした。自分が誇りに思っていたことさえ、そのときは難しく感じたのです。 ――日頃はどんな演技のアプローチを取るタイプですか? 今回のようにご自身の経験を参考にすることは珍しいのでしょうか。 僕にとって、演技とは「謎」です。テクニカルで精密なやり方、つまり声や身体、表情を操ることで感情を表現し、台詞やアイデアを伝える方法もあれば、自分自身の歴史や経験をひもといて役柄やストーリーに生かす方法もあります。 しかし言うなれば、すべての役柄、すべての脚本、すべてのプロジェクトが発見の旅です。僕は脚本や監督のビジョンを尊重したいし、監督の狙いを手助けしたい。共演者との仕事には貪欲でありたいし、お互いにエネルギーを与え合うことで本物らしいものを作りたい。だから、作品ごとに新たな冒険に出るようなもので、「今の自分にはこんな道具とスキル、地図、経験があるけど」という感じ。それでも今回は新しい経験ができたと思います。 ――ノーランやヴィルヌーヴ、ジェームズ・ガンら、そうそうたる監督の作品に出演していますが、それぞれの現場で互いの監督について話すことはありますか? ときどき、監督が「あの映画はどんな感じだったんだろう?」と興味を持ってくれることはありますよ。『プリズナーズ』の撮影現場でドゥニ・ヴィルヌーヴに初めて会ったときは、『ダークナイト』でのクリストファー・ノーランとの仕事について聞かれましたが、監督たちがお互いの作品のファンであることは素晴らしいですよね。一緒に仕事をした人たちは、誰もが「デヴィッド・リンチとの仕事はどうだった?」と聞いてきますよ(笑)。 リンチは僕にとって偉大なヒーローであり、(「ツイン・ピークス The Return」は)魔法のように素晴らしい経験だったから、その話をするのは大好き。監督たちが自分の大好きな監督について話しているのはすごく面白いし、フィルムメイカー同士をつなぐ糸になれたようでうれしいですね。彼らが相手だと、スタンリー・キューブリックに始まり、気になる作品のことは夢中になって話してしまいます。 ――そういえば、大のホラーファンであることも公言されていますよね。 (撮影現場で)SFやホラー、ジャンル映画について話すことも多いんですよ。僕にとって理想のホラー映画の組み合わせは、トビー・フーパーの『悪魔のいけにえ』、ウィリアム・フリードキンの『エクソシスト』、そして三池崇史の『オーディション』。もちろん、トッド・ブラウニングの『魔人ドラキュラ』については一日中話していられるし、ジェームズ・ホエールの『フランケンシュタイン』も大好き。古典的ドラキュラ映画を作ったハマー・フィルム・プロダクションの大ファンでもありますし、ほかにも大好きな映画は本当にたくさん、数えきれないほどあるんです。