「開き直りすぎ」な実写『おそ松さん』アプローチは大成功!でも後半の展開は大問題?
ハチャメチャにし過ぎた問題点も
●良くも悪くも「終わりそうで終わらない」 ここまで実写映画版『おそ松さん』の美点を述べてきましたが、残念ながら大問題と言わざるを得ないことがあります。 それは、前述した「メインの物語から離れたジャンルの話を終わらせようとする」流れが本当になかなか終わらないため、人によっては本気でうんざりしてしまうことです。「これキリねぇぞ」「撤収撤収!」などとツッコんだり、感動的な場面かと思いきやギャグで落としたり、「静かに揺れた~僕の心~」という挿入歌などが繰り返しすぎて、さすがに飽きてしまったり、悪い意味でマジメに観る気をなくしたりする人も多いのではないでしょうか。 劇中でもこの流れは「茶番」として描いている、そう感じることも作り手も想定していると思うのですが、いくらなんでもその茶番が長すぎます。Snow Manのメンバーそれぞれが熱演している、スタッフが美術や演出もちゃんと作ってあるのにもかかわらず、それらを意図的にせよ「どうせギャグで落とす」「どうせ茶番になる」と観客に思わせてしまっては本末転倒、それぞれのジャンルやSnow Manにも失礼なのでは? とも思ってしまいました。 そこは「終わりそうで終わらない茶番」だけに始終するのではなく、それぞれのジャンルの話を、本当に感動的なものにするための目的を示したり、もっとはっきりとメインの物語にからんできたりする、といった工夫が必要だったのではないでしょうか。 さらに、クライマックスでは物語上の流れを安易にどんでん返ししすぎている印象で、せっかくの『おそ松さん』らしい「なんでもあり」なコンセプトさえも、悪い意味で「付き合ってられない」「どうでもいい」と思わせてしまうレベルに到達してしまっていると思うのです。 ●「登場人物がほぼ全員クズ」や推しのハマりっぷりはやっぱり楽しい そんな問題点がありつつも、やはり豪華なキャストたちが、開き直って楽しそうにハチャメチャな内容の『おそ松さん』を全力で演じきっているのは、他にはない魅力でしょう。 「登場人物がほぼ全員クズ」という映画『アウトレイジ』の「全員悪人」よりもひどい(褒め言葉)状況が実写で良い意味で生々しくなっており、初っ端から向井康二さん演じるおそ松が「脱糞しかける」「放尿する」というとてもアイドルとは思えない姿に良い意味でドン引きしします。 また、高橋ひかるさんのトト子の暴言が板に付きすぎているほか、桜田ひよりさん演じるチビ太に至ってはその姿を見た瞬間に爆笑してしまうほどでした。トド松役のラウールさんが6つ子たちが並ぶ場面で、その190cm超えの身長をごまかすためか「首をすくめている」姿もなんだかいじらしくなります。 本作の菅原大樹プロデューサーは、アニメ『おそ松さん』を実写映画を企画した意図として、「コロナ禍の閉塞感といった気持ちを一瞬でも忘れ、何も考えずに笑えるような作品を制作したい」「Snow Manの公式YouTubeチャンネルでの無邪気なやり取りや、お互いのことを想っている様子は見ていて本当に微笑ましくて、まさに『兄弟』そのもの」と感じたことなどを語っています。 なるほどその通りの「ただ笑える」「兄弟っぽいSnow Manメンバーそれぞれのわちゃわちゃ感」を楽しめる内容でした。ここではもう、前述した終わりそうで終わらない、「もういいよ!」な印象も、いっそ楽しんでしまうのがいいかもしれません。
ヒナタカ