UKロック大復活の2024年、English Teacherが最重要バンドとなった4つの理由
2)高度な演奏スキルと音楽的広がり
では、『This Could Be Texas』の収録曲を具体的に見ていこう。「The World’s Biggest Paving Slab」は比較的ポストパンクの流れを強く汲む楽曲だが、コーラスで強烈な空間系エフェクトがかけられることで、宇宙の果てまで聴き手を吹き飛ばすような壮大さとサイケデリアを創出している。「I’m Not Crying, You’re Crying」はギタリストのルイス・ホワイティングが敬愛するジョニー・マーを彷彿とさせる見事なプレイを聴かせるトラックで、ジャジーな質感を持つ「You Blister My Paint」は深いエコーがミステリアスな奥行きを生んでいる。「This Could Be Texas」や「Albert Road」はアコースティック調の静かな始まりから徐々にビルドアップしていき、最終的には荘厳なカオスへと突入していく構成力が素晴らしい。サウスロンドンの血統を自分たちのスタイルの一部として残しつつ、短期間でここまで大きな音楽的広がりを獲得してみせたのは驚異的だ。 もうひとつ音楽面で注目したいのは、彼ら4人はリーズ音楽大学(Leeds College of Music、現在は名前が変わってLeeds Conservatoire)の出身で、演奏家としても高いスキルを持っていることだ。それがもっともわかりやすく表れているのが「Nearly Daffodils」だろう。この曲は4/4拍子で始まるが、2分辺りから各楽器が変拍子を奏でるブレイクへと突入し、再び4/4拍子に戻ってくる。変拍子や拍子の変化は彼らが得意とするところで、その点からマスロックやプログレッシヴ・ロックと比較されることも少なくない。もちろんそれは妥当な比較だが、筆者としてはリズムの複雑さを意識させずにポップソングとして聴かせる上手さはレディオヘッドに近いものを感じている。