UKロック大復活の2024年、English Teacherが最重要バンドとなった4つの理由
1)サウスロンドン勢の実験精神をアップデート
イングリッシュ・ティーチャーの初期のインタビューを読むと、ブラック・ミディやソーリーといったサウスロンドンのインディバンドたちを影響源としてよく挙げている。実際、彼らの最初期のシングルである「R&B」(2021年)は、「2018年以降のサウスロンドンからのバンドの波に強く影響されていた」とベーシストのニコラス・エデンが明言しているほどだ。曲のグルーヴを牽引するベースリフと鋭い刃物のようなギターサウンドが鮮烈なこの曲は、確かにサウスロンドン的なポストパンクの流れが感じられるだろう。 しかし「自らを(サウスロンドン的なポストパンクという)枠に押し込めたことで、ちょっとしたアイデンティティクライシスに陥った」という彼らはそれ以降、音楽性を大きく拡張し、サウンドのスケールをダイナミックに押し広げている。その成果はフォーキーで壮大な新機軸「A55」を収録した2022年の初EP『Polyawkward』で早くも萌芽が見られたが、さらにそこから何歩も前進し、遂にひとつの完成形へと至ったのがデビューアルバムの『This Could Be Texas』である。 ご存じの方もいると思うが、ここ1、2年でデビューしたイギリスの若手にはサウスロンドン勢からの影響を公言するバンドが多い。ラスト・ディナー・パーティもかつてはサウスロンドン勢の根城であるウィンドミルでライブをやっていたし、ブラック・ミディやブラック・カントリー・ニュー・ロードに影響されたと言っていた。実際、サウスロンドン勢がアンダーグラウンドで熱気に満ちたローカルシーンを形成していたことが、現在のロックバンドの活況の火種になったことは言うまでもないだろう。ただし、昨今の若手はサウスロンドン勢の実験精神を継承しつつも、そのサウンドはよりポップでダイレクトだ。ビッグなサウンドを鳴らすことにためらいがない、と言ってもいい。これはひとつの時代のモードの転換点であり、その先頭を走るバンドの一組がイングリッシュ・ティーチャーだということだ。