「終わってみれば簡単でしょう」 税理士の言葉に安堵 「相続税の支払い」で勘違いしていたこと 【50代女性記者体験記】
管理する相続財産の内訳がシンプルだったこともやめた理由のひとつ。生前から父名義の銀行口座を把握し、通帳とカードを預かっていたし、株券などの有価証券もなかった。もし被相続人が使っていた銀行の口座がわからない場合などは、ある程度の費用を払ってでも信託銀行に依頼をした方が精神的にも時間的にも負担は軽減したと思う。 また、海外に不動産があったり、相続財産がとても大きく複雑だったり、相続人同士がいがみあっていて話し合いが厳しかったり、相続人が高齢だったりといった場合なども信託銀行に依頼するほうが良いと感じた。とにかく相手は慣れている。 ■頂上は見えている 姉は「せっかくここまで相談もしたし、信託銀行でもいいのでは」と言っていたのだが、私は自分たちでできることはやってみたいと思うようになった。初めての相続業務。チャレンジしてみたいと思ったのだ。戸籍謄本も揃っており、相続税の申告日までにやるべきこともわかってきた。知識が多少ついた今ならば、信託銀行に丸投げをしなくても自分たちで何とかできるかもしれないと思った。 そうしたとき、友人の紹介で評判のいい税理士に出会った。父が亡くなって5カ月目だった。姉と3人で都内のホテルで挨拶し、正式に依頼した。7カ月目に税理士による「遺産分割協議書」が完成。8カ月目にその遺産分割協議書に署名と調印を行った。「遺産分割協議書」は、10カ月以内に作成し、そこに相続人全員が署名・捺印しなければならない。この時点でもう9合目といっていい。頂上は見えている。
そして9カ月目。いよいよ「相続税の納付」だ。「この用紙を銀行に持っていけば納付ができます」と税理士から渡された納付書を銀行に持っていき、その場で相続税の納付が完了した。本当にあっけないぐらい簡単だった。 「終わってみれば簡単でしょう」という税理士の言葉の通りだった。相続税の申告と納付を済ませて、喪中はがきを発送した。受け取った父の友人から封書が届き、電話をして父との思い出話を聞いているうちに、ようやく悲しみに触れる時間がやってきた。そして思った。相続の手続きは、故人との別れを悲しむ時間を「後ろ倒し」にしてくれる効果があるのだと。 ■すべて自分で行う人も 恥ずかしながら、相続税の支払いは、相続税の申告をした後に税務署から納付書が届くのかと思っていた。実際は違った。自分たち(厳密には税理士)で算出した金額を納付する。その後、修正申告ができるとはいえ、やはり慎重にやらなければならない。聞けば遺産分割協議書の作成から申告まですべて自分で行う人もいるそうだが、本当にそれはすごいと思う。「成功のカギは、良い税理士と出会うこと」というのが私の意見だ。なるべく相続税の手続きに慣れていて柔軟性があり根気強い税理士。そんな税理士に出会えたらラッキーだと思う。 相続税の手続きは、もしもミスがあった場合に過少申告加算税(10~15%)が課されたり、悪質な虚偽の過小申告をした場合は重加算税(原則35%)が課されたりすることもあるという。