メゾンの真髄を超絶技巧で表現した芸術的な懐中時計「ルイ・ヴィトン エスカール・ア・アニエール」を愛でる
ルイ・ヴィトンが、メゾンの時計製造における美と技を惜しげもなく注ぎ込んだユニークピースを完成させた。一般公開の予定がないという歴史的大作について、豊富な写真とともに解説しよう。 【関連画像】その他の画像を紹介
モチーフはアニエールに構えるヴィトン家の邸宅兼歴史的なアトリエ
新作ポケットウオッチ「エスカール・ア・アニエール」は、あらゆる最高峰の技術を持つメゾン、ルイ・ヴィトンをして完成までに2年の歳月を要したというユニークピースだ。直径50mmのケースにはキャリバーLFT AU14.01を格納。これは480個の構成パーツからなり、7つのアニメーションを組み込んだオートマタとミニッツリピーターの機構を有する。6時側のレバーを操作すると高音と低音、その2音の組み合わせで現在時刻の調べを奏でる。それと同時にオートマタが作動。左右にステップを踏む馬の脚と蹄に合わせて馬車の車輪も回転する。腕を振り上げた御者の背後にあるトランクも開き、中から小さなモノグラム・フラワーが出現。これら一連の動作を上空で見守るのは、LVカットダイヤモンドを抱きながら回転する太陽である。
この詩的世界の実現に向けては、ミシェル・ナバスやエンリコ・バルバシーニら異能のマスターウォッチメーカーが率いるハイウオッチ製造拠点「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」がムーブメントを製造。彫金をディック・スティーマンが施し、アニタ・ポルシェ氏がエナメルとミニアチュールペインティングを担当する。ルイ・ヴィトンの特別なタイムピースを製造するために結集したスペシャルチームは、それだけでも贅沢の極み。スイス時計製造とサヴォアフェールの最高峰の技術が惜しげもなく投入されるのだから、完成までに2年の歳月はかかって当然だろう。
このような超一流メンバーが結集し、それぞれに多くの手業と時間を駆使して作り出したのは、メゾンの発祥の地であり、1859年に創業者ルイ・ヴィトンがトランク製造のアトリエを構えたアニエールの邸宅だ。パリから数キロ離れたセーヌ河畔の村アニエールは、手作業で製造されるメゾンのトランクに使用する木材や資材の運搬に最適な場所であり、また1980年代後半までの何世代にもわたりヴィトン家の私邸でもあった。アールヌーヴォーの様式美が印象的なこのアニエールの邸宅は、今もメゾンの希少な製品やスペシャルオーダー製品のクリエーションの中心を担うアトリエとなっているほか、ミュージアム「ラ・ギャルリー」もある。