ワカメやコンブが二酸化炭素を減らす? 地球温暖化対策の鍵となる「ブルーカーボン」ってなに?
次世代育成、活動リソースの不足。いまだ課題は多い
――ブルーカーボン生態系を拡大・維持するにあたり、現在抱えている課題はありますか。 枝廣:熱い思いを持っている人がまだ少ないと感じています。主体的に人々を巻き込みながら活動に取り組めるといいのですが、人材育成にまだ注力できていないのが現状です。 また、熱意がある人たちがいたとしても、活動資金がネックになってきます。2020年度から「Jブルークレジット(※)」という制度が始まりましたが、ランニングコストはどうしても持ち出しになってしまいます。金融機関と連携を取りつつカバーできるようにしたいのですが、まだ形になっていません。いつか成功事例を作って全国展開できたらと思っています。 ※ブルーカーボンを取引可能なクレジットとして、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)が認証し、主に企業間で売買できるようにした制度。企業は削減できなかった温室効果ガスの排出を、クレジットを購入することで埋め合わせができる 枝廣:最後は技術面です。人がいてお金があっても、技術がないと藻場は再生できません。近年、藻場の再生技術や計測技術に関しては、企業側の研究開発が進んでいますが、まだ現場には落とし込まれていないんです。 今後は企業との連携をより強め、現場で使いやすい必要な技術を提供できるようにしていきたいです。 ――ブルーカーボン生態系を拡大・維持していくために、今後手を取り合っていきたい業界などはありますか。 枝廣:海に携わる業界はもちろんですが、お金の流れが変わらないと活動継続が難しいため、金融業界とはしっかりつながっていく必要があるでしょう。海には直接関係ないと考えている企業も、どこかで必ず繋がっていると思います。そこを意識してもらうような活動ができたらうれしいですね。 他にも「ブルーカーボン」に関する活動は、まちづくりや村のコミュニティーの再生など、さまざまなメリットを作り出せると考えています。 ――未来を担う子どもたちとつながり、「ブルーカーボン」について知ってもらうことも重要かと思います。 枝廣:おっしゃる通りで、「ブルーカーボン」に関する活動を持続可能なものにするのであれば、活動を担う世代を育てていくことはとても重要です。 実際、岡山県の日生(ひなせ)海域では、地元の小中学生と漁師がアマモの回収をする機会があり、私たちも熱海でイベントを開き、東京から子どもたちと一緒に活動してもらっています。その度に、彼らに海の楽しさを知ってもらいながら海の現状を知ってもらうことの重要性を実感しています。 まだこれらの活動が全国的に広がりきっていないのが現状ではありますが、学校教育のカリキュラムの一環として位置付けてもらえるようになれば、多くの子どもが自分にとってどういう意味があるのか、自分に何ができるのか考えてくれるようになるのではないかと思っています。