「ロールアップ戦略」の意味を説明できますか? 急成長する企業がこぞって注目する経営手法の「驚くべき中身」
経営者も成長させる「M&A体験」
経営者にとって、M&Aは単なる事業戦略の一環ではなく、キャリアそのものを左右する大きな転機になることが多い。及川氏はこう語る。 「ある程度の成功を収めた経営者が直面する問題の一つに『飽き』があります。長い間、同じ事業を続けると、最初の情熱が薄れてしまうことは珍しくありません。その結果、新しいアイデアが浮かばなくなり、事業開発のスピードも鈍ってしまう。それに伴い、優秀な人材を引き寄せる採用力も低下し、会社全体の士気やモチベーションにまで影響を与えることになるのです」 事業への情熱が薄れることは、会社の成長だけでなく、経営者自身のキャリアにもマイナスに働く。そんな時、及川氏は「そんな時にこそM&Aについて考えるべき」と、一歩引いて考えることの重要性を指摘する。 「M&Aは必ずしも後退を意味するわけではなく、むしろ新たなステージへの扉を開く機会です。得た資金をもとに新しいビジネスを始めることもできるし、投資家としてキャリアを広げることも可能です。結果として、自分自身が成長し、会社にも新しい風を吹き込める可能性がある。経営者にとっての『転職』の機会として捉えていいと思います」 経営者だけでなく、従業員にとってもM&Aはキャリアチェンジのきっかけとなる。異なる企業文化や業務プロセスに適応することは、スキルアップの絶好のチャンスであり、自らの成長を促す挑戦だ。社内でのキャリア転換が難しい従業員であっても、M&Aによって企業間の出向やスタートアップへのレンタル移籍など、多様なキャリアの選択肢が広がっていく。 及川氏はこう続ける。 「経営者も従業員も、自分自身の気持ちと向き合い、飽きや環境の変化にどう対応するのか、そしてM&Aや事業売却、転職を検討するタイミングを見極めることが重要です。区切りの時期を見誤ると、キャリア形成が中途半端に終わってしまうリスクがあります。柔軟に対応しつつスキルを積み重ねることで、その後の売却や転職をより前向きな一歩にすることができるでしょう」 企業の成長と存続を支える戦略としてだけでなく、キャリアを見直す機会でもあるM&A。変化を前向きに捉え、柔軟に対応する姿勢こそが、これからの時代に求められるだろう。
山科 拓郎