写真で旅する沖ノ島 “神宿る島”と関連遺産群の世界遺産登録が意味すること
神の島の静寂を守り続けるため写真展
写真家にして作家の藤原新也さんは 2012年以降、3度にわたり宗像大社の特別な許しを得て沖ノ島に上陸。絶海の荒波からはじまり、岩上祭祀が行われた巨石群や手つかずの森などをレンズに納めた。島の景色はただの景色ではない。藤原さんが古代の人々に抱いた畏敬の念が写し出す信仰の原風景だ。 今年5月に決行された3度目の上陸の際には、島内でも立ち入りがさらに厳しく制限されている場所での撮影が許可された。藤原さんは語る。 「今回の展示会では、禁足の森を高精細カメラで撮影した12メートルのパノラマ写真を展示します。あたかも実際の禁足の森を目の前にしているかのようなリアリティーが感じられると思います」 19日から始まる写真展「沖ノ島 神宿る海の正倉院」(東京・日本橋高島屋)では、これまで守られてきた有形(島)と無形(心)の神の宝を、直接足を踏み入れずとも感じられる特別な展示会だ。
現在は宗像大社の「神宝館」に収蔵されている沖ノ島のご神宝の数々も見所のひとつだ。写真でありながら生々しく、見る人に訴えかけてくる。藤原さんの手により長い眠りから覚め、ひっそりと、しかし確かに息づく宝物には、古代の人々の切実な想いが沁み込んでいるのがわかる。写真を通して信仰を目の当たりにできる、貴重な機会だ。 足を踏み入れることができないからこそ、意味がある。写真を通して遥拝することで、神の島の静寂を守り続けたいと願うばかりだ。 ■「沖ノ島 神宿る海の正倉院」展 撮影/藤原新也 【期間】7月19日(水)~8月1日(火)【会場】日本橋高島屋8Fホール 【入場時間】午前10時30分~午後7時【料金】大人800円