吉田麻也、堂安律、板倉滉の移籍でブンデスに日本人10人…W杯ドイツ戦にどんな影響を与えるのか?
もちろん、実際にピッチに立たなければ何も始まらない。選手本人が望んだ移籍が実現したとしても、ポジションを約束されたわけではない。リーグ全体のデュエルキングに君臨する遠藤のように、自分にしかない武器を前面に押し出して監督の信頼を、チーム内で確固たるポジションを勝ち取る戦いがここから始まる。 その意味でステップを目的とした移籍は、特にシーズン真っ只中の11月にワールドカップが待つ今夏は大きなリスクを伴う。6月の代表活動中に自身の去就を問われた吉田は、高いレベルでの挑戦を継続させるか、試合に出られる環境を優先させるかの二者択一に「まずは試合に出ないといけない」と前置きしながらこう言及していた。 「その上で需要と供給のバランスもあるけど、レベルを落とすのは簡単なので、高いレベルに身を置きたい。選手としてシンプルにそう思っている」 モンツァやトラブゾンスポルに加えて、Jリーグへの復帰もありうるのでは、と報じられた吉田は最終的に初志を貫いた。肉弾戦を含めたハイインテンシティーを体に刻んだサウサンプトン、老獪なストライカーたちと心理戦を繰り広げたサンプドリアに続いて、シャルケを1部残留に導く大仕事にやりがいを見いだした。 8月に34歳になるキャプテンをはじめとする代表選手たちの選択を、森保監督は「ドイツという世界のトップを走るような国のリーグで、多くの日本人選手が評価されていることを日本人として嬉しく思う」と歓迎している。 「より高いレベルでプレーすることが選手の価値を上げ、それが日本代表の強化にもつながる。いろいろなタイミングがあるけれども、私としては応援したい。失敗というか、難しい状況になることもあるが、チャレンジしないと殻を破ることはできない」 ドイツとの初戦まで約4ヵ月半。それまでにヨーロッパ組を含めた陣容で活動できるのは9月後半に設定されている次回の国際Aマッチデー期間と、代表メンバーの正式決定をへて現地カタールで臨めるワールドカップ直前の期間しかない。 代表チームとしての活動が大幅に限られるからこそ、所属クラブでの日々が重要なウエートを占める。ドイツやイングランドなどで8月第1週から始まる新シーズンに合わせて森保監督も同後半に渡欧。そのままヨーロッパ組を視察しながら、ヨーロッパでの活動が予定される次回の国際Aマッチデー期間を迎える青写真を描いている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)