「燃える男」星野仙一がただ一度だけ土下座した「日本シリーズ」の「衝撃の真相」
土下座して伝えた言葉
先日、中日が球団初のOB戦を開催することを発表した。第一弾として明かされた参加OBは監督として権藤博、谷沢健一、選手では小松辰雄や山本昌、山﨑武司、岩瀬仁紀、川上憲伸、荒木雅博らファンの思い入れの深い面々が名を連ねた。現役時代は打倒巨人に心を燃やし、監督としても中日に2度の優勝をもたらした星野仙一さんの参加は叶わないが、当日のユニフォームは星野さんが率いて優勝した88年のデザインがベースになるという。 【写真】大谷翔平を支える、妻・真美子さんの「素顔」! その88年、星野さんが日本シリーズ後に土下座したことは、あまり知られていない。 その衝撃的な場面に立ち会った人間は、わずか数人しかいない。 その1人が、投手コーチ、スカウト、監督付広報などで長年、星野さんを支え続けた早川実氏である。 「そのときのことは今でも鮮明に覚えています。星野さんが中日監督就任2年目に初めてセ・リーグを制し、日本シリーズで西武に敗れた後のことです。選手たちには『お疲れさん』のひと言だけだったんですが、その後、私たちコーチ陣がいる部屋に来ると、おもむろに星野さんが両膝を床についたんです。我々もなにが起きているのか、どうしていいかわからず、固まってしまいました」(以下、「」は早川氏) 部屋が静寂と緊張に包まれる中、星野さんが口を開く。 「今まで無理を言ってきたけど、ありがとう」 そう言って頭を下げたという。
叱るのは選手ではなくコーチ
就任1年目の前年は2年連続5位だった中日を2位に押し上げたが、星野さんはチームの若返りを図るため、大島康徳、平野謙を放出。宇野勝をセカンドに動かしてショートにはドラフト1位で入団した立浪和義現監督を抜擢、正捕手だった中尾孝義を外野にコンバートするなど布陣を刷新して臨んでいた。 だが、4月は5勝11敗と大きく負け越して最下位に沈んだ。 「次第に調子を上げて優勝はしましたが、そのころは選手がどうであっても、よく叱られたのは担当コーチだったんです。私は1軍コーチ補佐兼監督付広報で四六時中、一緒にいましたが、コーチも大変だったと思います。 星野さんは自分の思うようにやって、それでもついてきてくれたことへの感謝と、にもかかわらずチームを日本一に導けなかった申し訳なさからの土下座だったんでしょう。もちろん、そんなことは後にも先にも、その1度だけでした」 そのときのコーチ陣で最年長だった池田英俊さんが「監督、いいです、いいです。頭を上げてください」と言って駆け寄る。早川氏も続き、2人で星野さんの体を起こした。