養殖モズク、地域の特産品に 個人で引き継ぎ再起、宇検村
鹿児島県宇検村平田(へだ)で1日、養殖モズクの浜売りが始まった。村内のモズク養殖は2020年に有志団体によって約20年ぶりの復活を果たしたものの、数年で解散。「このまま終わらせたくない」と立ち上げメンバーの一人だった前田尚登さん(68)が昨年引き継ぎ、再スタートを切った。前田代表は「きれいな海で育った質の高いモズクを地域の味として定着させたい」と話した。 宇検村では2000年ごろにモズク養殖業者が撤退。地域活性化を目指す同村平田・阿室・須古の住民有志が「やけうち水産」を立ち上げてモズク養殖の復興を図ったが、新型コロナウイルスの影響で運営が難しくなり活動を停止していた。
前田代表は23年夏に個人で事業を引き受け、秋には同村崎原地区の沖合2カ所で幅1・8メートル、長さ20メートルの網70枚に種付けした。今年5月31日から水揚げが始まり、約5トンの収穫を見込む。浜売りの人手も合わせて6月2日までの3日間で、住民ら延べ85人を雇用するという。妻のあき代さん(63)は「宇検産のモズクを待ちわびてくれていた人たちに喜んでもらいたい」と話した。 1日は平田漁港にテントが立ち、収穫したばかりのモズクがキロ800円で販売された。午前9時の販売開始とともに村内外から多くの人が訪れ、初夏の味覚を次々と購入していた。同村湯湾の惠麻美さん(39)は「乾燥品とは味が全然違う。酢の物や天ぷらでもおいしいが、そのまま食べるのが一番」と笑顔。奄美市名瀬から駆け付けた70代の男性は「県本土の友人に送る分も合わせて7キロ購入した」と話していた。 浜売りや予約販売のほか、海水で洗った後に冷凍したものを同村湯湾の観光交流施設「ケンムンの館」でも販売する。前田代表は「量より質を重視して今後も長く事業を続けていきたい。自信を持って売れる商品。ぜひ食べて味を確かめてほしい」と誇らしげに語った。