作家・吉田修一×監督・大森立嗣の渾身の再タッグに役者たちが応えた「湖の女たち」
およそ2時間に及ぶ特典映像にはメイキングやイベント映像集、鼎談インタビューも収録
特典として、2023年秋に琵琶湖の北部で行われたおよそ1カ月に及ぶ撮影のクランクインの様子から、気温7℃、水温16℃の中、手錠をした状態でボートから真っ暗な湖に飛び込む過酷な撮影の舞台裏。そして、それぞれのオールアップの際のコメントが収められた30分のメイキングのほか、Blu-rayにはイベント集(完成報告会・完成披露試写舞台挨拶・公開記念舞台挨拶)に加え、福士蒼汰×松本まりか×大森監督による鼎談インタビューも収録。 いずれの映像も本編の理解に役立つ非常に興味深い内容ではあるが、なかでも鑑賞直後の観客に向けて実施された公開記念舞台挨拶には、原作者・吉田修一から届いた手紙がMCによって読み上げられるシーンもあり、登壇者たちの緊張が手に取るように伝わってくる。感極まった様子の松本が「私は罪深いことをしてしまった」と涙ながらに語る場面には、生身の肉体をカメラに晒す役者の知られざる心の内が垣間見え、こちらまでグッときてしまった。 メイキング内には、取り調べ室で福士扮する圭介が、松本演じる佳代を見上げる場面の目線の動かし方を大森監督が丁寧に演出する姿も収められ、実在感を伴う役者の芝居が特徴的な大森組の秘密の一端に触れることができる。インタビューによれば、浅野が本作で体現している伊佐美像は大森監督がもともとイメージしていたものとは違ったそうだが、途中から浅野が自ら作ってきた伊佐美に乗っかることにしたのだという。その結果、思いもよらない独特なニュアンスの「世界は美しいんかなー」が生まれ、「『やられたなー』と思ったね」と監督が語る姿も印象的だった。そのほか、福士と松本と大森監督が「一番罪深いと思う登場人物」の名を明かす鼎談も見逃せない。その日の気分や体調によって世界の見え方が変わるように、映画や小説の感じ方も様々な要因によって左右される。好きなタイミングで何度も鑑賞できるBlu-rayやDVDで、本当に「世界は美しいのか」確かめて欲しい。 文=渡邊玲子 制作=キネマ旬報社
『湖の女たち』 ●2024年/日本/本編141分 ●原作:吉田修一『湖の女たち』(新潮文庫刊) ●監督・脚本:大森立嗣 ●出演:福士蒼汰、松本まりか 福地桃子、近藤芳正、平田満、根岸季衣、菅原大吉 土屋希乃、北香那、大後寿々花、川面千晶、呉城久美、穂志もえか、奥野瑛太 吉岡睦雄、信太昌之、鈴木晋介、長尾卓磨、伊藤佳範、岡本智礼、泉拓磨、荒巻全紀 財前直見/三田佳子 浅野忠信
キネマ旬報社