連載『lit!』第107回:吉田夜世、サツキ……2024年上半期にバズ曲を生み出したボカロP最新作4選
間もなく2024年も折り返し。時の流れの速さに驚く人も多いだろうが、今年も上半期の半年だけですでに多くの話題を集めた楽曲群が各音楽シーンで誕生している。それはこのVOCALOIDシーンでも同じ。今回は2024年上期の総括も交えつつ、カルチャー内で特に注目を集めたボカロPの直近作をピックアップしていく。 【画像】「好きな惣菜発表ドラゴン」手掛けたンバヂ「座椅子のうた」、シュールなサムネイル 紹介するのは、ボカロP活動を始めて間もないルーキーや、着実に経験を重ねてようやく世間から注目を浴び始めた新たな才能を持ったクリエイターばかり。シーンの動きを注視する中では、今後マストチェックの面々とも言えるだろう。 ■吉田夜世「I know 愛脳.」 先日発表された2024年上半期Billboard JAPAN「ニコニコ VOCALOID SONGS TOP20」(※1)にて、圧倒的支持によって首位を獲得した「オーバーライド」。楽曲の人気拡大で一躍名を広めた吉田夜世だが、最新曲となる「I know 愛脳.」でもヒットメーカーとしての鬼才ぶりをを遺憾なく発揮している。 バラエティに富んだメロディ展開を強調した4つ打ちのビートでまとめ上げ、その中にも心地よく韻をおさえた歌詞や、先鋭的なEDMサウンドを織り交ぜたオリエンタルな音色などの遊び心が散りばめられている。『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』の「一緒に作ろう!第20回楽曲コンテストプロセカNEXT」にて、晴れて本曲がアプリゲーム採用曲に選出されたのも、そういった手腕を評価されての結果といったところか。 ■サツキ「メズマライザー」 以前にも当連載(※2)で紹介したが、その後も依然として驚異の速度で人気拡大し続けているサツキの最新曲「メズマライザー」。楽曲公開からわずか2カ月弱で、動画はYouTubeで4500万再生を突破(6月21日時点)。先述のBillboard JAPANチャートでも、この短期間で上半期ランキング6位に食い込むという恐るべき支持を獲得している。 channelの手掛けたMVのみならず、高密度の音数ながら良い意味で嫌悪感がありつつも圧を感じさせないミックスや、リズミカルでフックのある響き、解釈に余地を持たせた歌詞など、サウンド面でもサツキの地力の高さを感じさせる本作。それらの複合的な要素が結果的に大勢の海外リスナーまでも魅了しており、スマッシュヒットの一因ともなっている。