北海道の小売りを変えた「コープさっぽろ」、経営破綻から再生へ。年間売り上げ3200億円への復活の道のり
自前で物流会社を持つ強み
組織づくりと並行して、事業の成長を支えてきたのが急成長する宅配事業「トドック」です。成長のポイントは2つ。 ひとつは自前の物流会社を所有する強みです。その結果、「物流量の増大=コスト増」という図式から脱却し、宅配事業をドライブすることができました。 大見「物流を完全自前化している小売業者は、コープさっぽろのほかは沖縄のサンエーと東海地区のバローというスーパーだけです。 ほかがやらない理由はいろいろあるでしょうが、最終的には複雑な物流業界に手を出すことのリスクに躊躇して、トップが決断できないことが大きいのではないでしょうか」 2013年から事業をスタートした物流関連会社、北海道ロジサービスは初年度から黒字で、その後も毎年売り上げを拡大しています。 大見「この物流システムを持つことが、宅配事業はもちろん、ほかの事業戦略にも大きなプラスとなり、競争優位性を発揮しています」
「物流こそ、勝敗の決め手」と語る大見氏。人口減少社会での小売業は、スーパーマーケットの時代から、ラストワンマイルに手が届く宅配事業にシフトするというのが、その理由です。 世界的小売りAmazonと比べても、コープさっぽろの宅配・物流の仕組みなら「勝てる」というのが、大見氏の見立てです。 大見「Amazonの物流センターを見学して気づいたのが、Amazonは1個包装の宅配がほとんどだということ。我々は、1週間に1回、平均して13~15点の品物をまとめて宅配で届けます。物流コストを考えたら、圧倒的に我々のほうが勝っています」
宅配で大型スーパー並みの2万品目の品ぞろえを
では、物流コスト以外に何があればAmazonに勝てるのか。それが2つ目のポイントでもある、商品品目の充実度です。 さまざまな分析から、商品構成が2万品目あれば、利尻島や礼文島にポツンとある一軒家にまで、大型スーパーと大型ドラッグストアの品揃えの9割が届けられることがわかりました。
大見「コンビニは人口3000人、1日の売り上げ40万円が最低採算ラインです。人口減少が加速するなか、コンビニの存続はどんどん厳しくなるでしょう。 買い物困窮者になった組合員のもとに、我々が大型スーパー・ドラッグストアの品ぞろえを網羅した商品を毎週、自宅まで届けることで、一気に勝ちが見えてきました」 実際、コープさっぽろの宅配トラック1台で、コンビニの最低ラインである1日40万円を超える売り上げがあります。 大見「しかも、北海道の全世帯の約2割がコープさっぽろの宅配を利用しており、そのネットワークの優位性もある。そう考えると、今後、宅配事業のポテンシャルはかなり大きいと断言できます」 構成・取材・文:久遠秋生 撮影: 新津隆將 バナー写真提供:コープさっぽろ 図版作成:WATARIGRAPHIC デザイン:山口言悟(Gengo Design Studio)