小池百合子都知事、始球式で「剥離骨折」判明 ただの骨折との違いを医師が解説
剥離骨折の診断・検査内容
編集部: 剥離骨折の診断方法を教えてください。 甲斐沼先生: 医院を受診すると、はじめに問診が行われます。問診では痛みが生じた経緯や患部の診察を行い、現状をチェックするのが一般的です。診察から剥離骨折が疑われる場合には、症状に応じて画像検査が行われます。主にはレントゲン検査やCT検査、およびMRI検査などです。検査を行うことで骨のずれや細かい状況を確認し、今後の治療方針などが決定されます。 編集部: 剥離骨折の際はどんな検査をしますか? 甲斐沼先生: 剥離骨折が疑われた際に行われる画像検査は、現在の状態に応じて段階的に進めていきます。患部を画像で確認することで、症状の細かい把握・分析が可能です。剥離骨折が疑われる場合、まずはレントゲン検査を行うことが一般的です。 レントゲン検査では、骨折の有無や骨がずれていないかを確認します。ただしレントゲン検査のみでは、詳細な診断がつかない場合があります。このようなときにはCT検査やMRI検査など、より精密な検査が必要です。 編集部: 検査時間の目安が知りたいです。 甲斐沼先生: レントゲン検査の場合、X線撮影が行われます。更衣の時間を除くと、およそ数分で検査は終了です。ただし撮影枚数や特殊な撮影が必要なときなどには、時間を要することがあります。CT検査は用いる機器や手法によって、検査時間が異なります。検査に10~15分ほどかかる場合もありますが、MDCT(multidetector-row CTの略称)検査と呼ばれるものであれば数分で検査は終了です。MRI検査では検査内容によって異なりますが、検査は40~70分ほどかかります。検査中は動いてはいけないため、トイレなどはあらかじめ済ませておく必要があります。
剥離骨折の治療方法や治療中の過ごし方
編集部: 剥離骨折の治療方法はどんなものがありますか? 甲斐沼先生: 剥離骨折の治療には、大きく分けて3つのものが挙げられます。 まずは、骨折が疑われるような出来事が起きたときの応急処置です。応急処置を施すことで、症状の緩和やその後の治療に良い影響を与える可能性があります。剥離骨折が疑われるときは、患部を冷やす・患部を圧迫するなどの処置が有効です。 医院を受診した場合、軽症のときは主に保存的治療が行われます。保存的治療とは、ギプスなどを用いて、患部が動かないように固定する治療法です。痛みが強いときは、併せて鎮痛剤が処方されます。 最後に、ケースとして多くはありませんが、骨のずれや骨折の程度によっては手術が必要です。加えて腱や靭帯に損傷がみられるときは、併せて治療を行います。 編集部: 治療方法にも色々あるのですね。完治するまでどのくらいかかるのでしょうか? 甲斐沼先生: 適切な治療を行った場合、4~6週間ほどで軽い運動であれば開始できます。ただし痛みが緩和したからといって急に激しい運動をしてしまうと、完治までの期間が長引いてしまいかねません。痛みが引いたからと焦らず、患部の状態を確認しながら徐々にペースを上げていきましょう。 骨の修復が順調に進めば、2~3ヶ月ほどでスポーツにも復帰が可能です。なお上記の期間は、治療が順調に進んだ場合の目安です。骨折の程度や治療中の過ごし方によっては、完治までに時間を要する場合があります。 編集部: 治療中の過ごし方の注意点を教えてください。 甲斐沼先生: 剥離骨折の治療中は、健康的な生活を心掛けることが大切です。骨の修復を促すためにも食生活や運動など、日常生活にも気を配りましょう。 まず治療中の食生活は、バランスの良い食事を心掛ける必要があります。骨折したときは骨の形成を促す、タンパク質・カルシウム・ビタミンDなどを意識的に摂取するのが効果的です。しかし骨に良いからといって過剰に摂取してしまうと、栄養が偏ってしまい他の病気を併発しかねません。加えて骨折中は運動不足になりがちなため、カロリーオーバーにも注意が必要です。早期の復帰を目指すためには、カロリーなどの食生活に気を配りましょう。 剥離骨折の治療中であっても、医師の許可がある場合には入浴も可能です。入浴は血流を促してくれるため、骨の癒着にも良い影響を与えます。ただしギプスを着用しているときは、ギプスを濡らさないように注意が必要です。ビニール袋でギプスごと患部を覆うなど、ギプスが濡れない工夫を施しましょう。 また痛みが治まって来たら、適度な運動も有効です。体を動かすと全身の血流も良くなるため、骨の癒合を促す効果にも期待できます。骨折したからといって全く動かないと筋力の低下にもつながるため、痛みが少ないときは適度に運動を行いましょう。 編集部: 最後に、読者へメッセージをお願いします。 甲斐沼先生: 剥離骨折は、靭帯や筋肉、腱などの骨格組織が急激に収縮することで骨がはがれ落ちる骨折を意味します(医学的には「裂離骨折」と呼称されています)。一般的には、スポーツや交通事故、転落外傷などに付随して生じ、患部の疼痛症状や腫脹所見、皮下出血を認めます。骨折部位によって、患部周囲の感覚障害や歩行能力低下を来しますので、発症した際には、患部アイシングなどの応急処置をした後に、専門医療機関を受診することが重要です。 症状緩和に有効的に働く応急処置には、患部の安静を保つ、アイスパックなどにより患部を冷却する、外傷部位を圧迫して心臓よりも高い位置に挙げておく方法などが考えられます。保存的治療としては、ギプスやシーネなどの専用器具を用いて局所的に患部固定し、腫れて痛み症状が顕著な場合には鎮痛薬内服なども上手く活用することが勧められます。 万が一、骨折片のずれが強いケースや機能障害が顕著な例では手術治療を検討します。骨のみならず腱や靭帯も合併して損傷している際には、これらの損傷部位も同時に手術で修復することが考えられます。