【「東大宇宙博士」がズバリ解説!】スペースXが狙う「100万人火星移住」は本当に実現可能なのか? 成功のカギを握る“3つのもの”とは?
さらに、化学の視点で見ると、水は「H₂O」。分解すると、「酸素」と「水素」を得ることができます。 呼吸に必要な酸素は、水が十分にあれば手に入るということです。 酸素にはもう1つ重要な使い道があります。 その使い方とは、ロケットの酸化剤です。さらに、水素はロケットの燃料になります。 燃料と酸化剤があれば、ロケットは飛ぶ。 つまり、水があれば、地球に帰還するロケットを飛ばすことができるということです。
■「いかに現地調達できるか」が移住のカギ 月・火星移住には「基地」「酸素」「水」が不可欠ですが、これらすべてを地球から運ぶのは、莫大なコストがかかるので現実的ではありません。 移住実現のためには、いかに必要な物資を現地調達できるかにかかっています。 まず、「基地」の場合、月や火星の砂から建築資材をつくる研究が行われています。 そして、「酸素」については、月の砂や火星の大気から調達することが検討されていて、すでにNASAが火星の大気中の二酸化炭素から酸素を取り出す実験を成功させています。
「CO₂」を分解して酸素を得るということですね。 では、肝心の「水」はどのように調達できるのでしょうか。 月の砂には水分が含まれていると期待されていましたが、いまのところ地球の砂漠以上にカラッカラに乾いていることがわかっています……。 火星には北極・南極に「水の氷」があるとわかっていますが、基地をつくるには寒すぎるため、人が利用しやすい形で大量の水が集中している場所がないか、いまこの瞬間にも探査機が探しまわっています。
基地をつくる技術開発、酸素をつくる工学実験、水を探す科学研究、現地調達に向けた取り組み……。こうした挑戦は世界中で続けられており、月・火星移住は現実味を帯びてくることになります。 ■「火星都市計画」実現に向けた問題点は… いざ、火星に移住できるとなった場合、倫理的な側面からも考えるべきことがあります。 火星からすると地球人は外来種です。地球から持ち込まれた菌が、そこにいるかもしれない火星の生態系を壊さないようにする必要があります。