被団協のノーベル平和賞受賞決定「世界にとって意味ある」…被爆者や観光客から平和期待する声
被爆地・広島、長崎では12日朝、被爆者らが核なき世界を訴える決意を新たにした。海外からの観光客らも、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)のノーベル平和賞の受賞が決まったことを機に、平和への思いが世界に広がることへの期待を口にした。 【写真】「原爆翌日の長崎」新たな写真、地面から煙立ち上る爆心地付近
「活動続ける勇気もらった」
広島市の平和記念公園には、県被団協の理事長・佐久間邦彦さん(79)ら10人が訪れ、犠牲者に受賞決定を報告した。
佐久間さんは生後9か月の時に広島市の爆心地から3キロで被爆した。退職後に被爆体験を証言している。この日午前8時頃、佐久間さんは他の9人と原爆死没者慰霊碑の前に並び、「受賞を原爆で亡くなった皆さんと共に喜びたいと思って来た。次は核兵器が廃絶された時に報告に来るので、それまで安らかにお眠りください」と伝えた。その後、全員で数十秒間、黙とうし、目に涙を浮かべる人もいた。
佐久間さんは「被爆者は高齢化が進み、人数も減っているが、改めて活動を続ける勇気をもらった」と強調。被爆者運動を先導した坪井直(すなお)さん(2021年、96歳で死去)の言葉に触れつつ、「来年で被爆80年。坪井さんを始め、多くの被爆者や遺族が望んできた核なき世界に向け、『ネバーギブアップ』の精神で頑張りたいと思う。慰霊碑に名が刻まれた被爆者の皆さん、見守っていてください」と語った。
原爆で父が犠牲になった県被団協事務局次長の古田光恵さん(77)は「ウクライナや中東の紛争地ではいつ核兵器が使われるか分からない。これからも核兵器禁止条約への参加を訴えていきたい」と話した。
フランスから観光で訪れたドゥニーズ・ジャン・ルイさん(60)は原爆ドームを見つめ、「各地で悲惨な戦争が行われている時代に、日本だけでなく世界にとっても意味のある受賞だ。広島の思いが世界に届くきっかけになる」と述べた。
母親のおなかの中で被爆した胎内被爆者で、広島平和記念資料館の元館長の畑口実さん(78)は「長年の苦労が実った」と被爆者たちの歩みをかみ締めた。