子どもと「よい関係の教員」見分ける2つの観点 学級の「ボス」には1対1で個別に働きかけを
学級内で笑いが起きなくなったら要注意
11月は、学級内で子どもの不安感が増大し攻撃的な態度が見られやすい時期だと言われる。学級崩壊の兆しに早めに気づき対策を講じるためにはどうすればよいか。13年間の公立小学校教員生活の中で、いわゆる「荒れた学級」の経営にあたった経験を持ち、現在では京都大学大学院教育学研究科に在籍する三好真史氏に聞いた。 【画像で見る】13年間の公立小学校教員生活の中で、いわゆる「荒れた学級」の経営にあたった経験を持ち、現在では京都大学大学院教育学研究科に在籍する三好真史氏 学級経営や教師の言葉かけに関する著書を多数持つ三好真史氏。小学校教員時代を振り返りつつ、11月ごろの児童の様子について次のように語る。 「日照時間が短くなる10月から11月にかけて、“安心ホルモン”であるセロトニンの分泌量が減り、子どもたちの心が不安定になります。また、運動会や発表会などの行事が重なって集団行動が多くなり、皆と同じことができない子へのいじめが始まることもあります」 高学年は行事で主要な係を担うため、行事が終わって目標を失うと、刺激を求めて学級崩壊につながる言動をとることもあるという。行事はないが、冬休みまではまだ時間があるというこの時期こそ、学級経営上は要注意なのだ。 教員が児童とよい関係を築けているか確認する方法として、三好氏は「健全な笑いが起きるかどうか」「児童に謝ったときの反応がどうか」の2つの観点を挙げる。 「健全な学級であれば、教員が面白い話をしたときに『ワハハ』と笑いが起こります。しかし、子ども同士で日常的に『先生のここが嫌だ』などの会話がされていると、笑いが起きなくなります。また、急な時間割変更などで『予定が変わりました、ごめんね』と謝ったときの反応が、『わかりました』『大丈夫です』であれば良好な関係ですが、『はあ?』『まじで?』という返答の場合は、関係性は悪くなってしまっていると思われます」 嫌われたら反発されるからと、児童にフレンドリーに接する教員は少なくない。しかし、三好氏は「信頼関係は仲のよさでは判断されない。児童に憎まれないように厳しい指導をすることも可能だ」と指摘する。 「とはいえ、ただ厳しくすればよいのではなく、『さっきの話、先生はこう思って言ったんだけど、わかってくれた?』と、その日のうちにフォローすることが重要です。『先生はそこまで考えてくれていたのか』ということが伝われば、信頼関係は回復しやすい。逆に、フォローが不十分で納得できていないまま帰宅させてしまうと、児童の中で教員への怒りが増大し、家で親に不満を言ったりして、翌日から険悪になりがちです」 学級の「落ち着きのなさ」は、低学年は児童同士の喧嘩、高学年は教員への反抗という形で表れることが多いという。 「2年生あたりの担任『あるある』ですが、授業を始めると、児童から休み時間中の喧嘩やトラブルを報告されます。年齢的に子どもの本心は、喧嘩の解決というより、『自分の話を聞いてほしい』というのが強い。授業中に対応してしまうと、『喧嘩すれば先生に話を聞いてもらえる』と勘違いしてしまうため、『話は次の休み時間で聞くから今は授業を受けましょう』と伝えましょう。いざ呼び出すと、『もういいや!』とあっけらかんとしていることも多いものです」 高学年の反抗的な態度には、「子どもが思ってもみない反応を返すことが大切」と三好氏。「『静かにしなさい』『ちゃんとやりなさい』と叱ると子どもの思うつぼで、期待通りの言葉を求めて反抗的な言動を重ねがちです。一方で、教員が想定外の反応をする“交差交流”をすると、やり取りが終わることも多々あります。例えば、『その行動をとる理由を説明してください』と淡々と説明を求めたり、『ああ、これね、面倒くさいよね』と茶化したりするなど、子どもが反応に困る返答をすることが大事です」