中国がASEAN会合の主導権握る-大統領選前の米国、好機生かせず
(ブルームバーグ): 今週ラオスで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議は、外交を強化してきたバイデン米政権にとって、アジアで培った関係をアピールする好機だった。だが、一連の新たな合意を結ぶことで、この機会を最大限に活用したように見えるのは中国だ。
米国とその同盟国が東シナ海と南シナ海における中国の攻撃的な行動を非難する中、中国の李強首相は首脳会議を利用して、インド太平洋地域全体における自国の経済的利益を推進した。
中国と10カ国から成るASEANは、現行の貿易協定を改善させ、拡大する計画を発表。李首相はまた、タイとカンボジアとの鉄道プロジェクトの加速を提案し、オーストラリア産ロブスターの輸入制限を年内に撤廃することでも合意した。中国は、豪中間の緊張関係を招いた貿易障壁の撤回を続けている。
シンガポールのローレンス・ウォン首相はASEANと中国の貿易拡大に関する合意について、「特に保護主義が台頭しつつあるこの時期において重要な動きだ」と李首相や他の地域の指導者たちとの10日の会合で指摘。「自由貿易とウィンウィンの市場協力の重要性について、すべての人々に非常に明確で重要なメッセージを送ることになる」と述べた。
中国は15年連続でASEAN全体の最大の貿易相手国となっている。
新しいリーダー
今回の首脳会議は、米国にとって難しい時期に行われた。米大統領選の終盤と重なり、バイデン大統領は2年連続で欠席。同大統領はまた、最近の2つのハリケーンによる被害や、中東情勢の緊迫化にも対応を迫られている。
ラオスの首都ビエンチャンには石破茂首相をはじめ、8月就任のペートンタン・タイ首相らアジアの新しいリーダーが集まり、米中の間でどのような立場を取っていくかを示す機会となった。
石破首相は就任後初の李首相との直接会談で、中国人民解放軍機による日本の領空侵犯について詳細な説明を要求。9月に深圳で日本人学校の男子児童が襲われて死亡した事件と6月に起きた日本人の襲撃事件を巡っても、中国側に事実関係の明確化を求めた。