軍用フェラーリがあった!? およそ7700万円で落札された「458イタリア アーミー」をオーダーした人物の名を知って納得のテーラーメードです
ユニークなフェラーリ・デザインを手に入れるチャンスだった
2024年5月10日、RMサザビーズがモナコで開催したオークションにフェラーリ「458イタリア アーミー」が出品されました。フェラーリのテーラーメイド・プログラムによって仕上げられたこのモデルの依頼主は、かつてフィアット帝国を築き上げたジャンニ・アニエッリの孫であり、その後継者と目されているラポ・エルカンでした。出品車の458イタリア アーミーのエクステリアを彩るのは、ワンオフのカモフラージュ・パターンでオークションも注目されました。 【画像】ボディだけじゃなく細部にも迷彩柄が! フェラーリ「458イタリア アーミー」を見る(全52枚)
ワンオフカラーの458イタリア
フェラーリのファンならば、このモデルが2009年から2015年まで生産されていた、「458イタリア」であることはすぐに理解できることだろう。リアミッドに搭載されるエンジンは、コモンレール式の高圧直噴システムを採用したことで12.5という高圧縮比を実現することが可能になり、最高出力で570psを発揮するもの。これに7速のゲトラグ製デュアルクラッチ式F1マチックを組み合わせ、フェラーリの公式データによれば、0-100km/h加速を3.35秒で、また最高速では325km/hを達成する性能を誇った。 と、ここまでは458イタリアの簡単な解説だが、今回RMサザビーズのモナコ・オークションに出品された458イタリアのトピックスはその性能で語られるものではない。フェラーリのテーラーメイド・プログラムによって仕上げられたこのモデルの依頼主は、かつてフィアット帝国を築き上げたジャンニ・アニエッリの孫であり、その後継者と目されているラポ・エルカン。 マラネロのファクトリーから出荷されるフェラーリは、時代を超越したボディスタイリングと驚異的な運動性能でカスタマーに大きな歓びを与えると同時に、表現力豊かなステートメントでもあるとの考えを持つエルカンは、自らフェラーリのテーラーメイド・プログラムで、さらなる満足を求めるオーナーに、クリエイティブでパーソナライズされたアイデアを提供する場がフェラーリにはあることを証明することを試みたのだった。彼が自らオーダーした「458イタリア アーミー」は、その典型的な例といえるのだろう。 458イタリア アーミーのエクステリアを彩るのは、もちろんワンオフのカモフラージュ・パターンだ。これはボディパネルだけではなく、ホイールやバッジ、ブレーキキャリパー、グリルなど、細部に至るまで丁寧に施されているもの。さらにインテリアでもダッシュボードやドアパネル、シートなどにもこのテーマが採用されている。カーボンファイバー製のパネルもグリーンに塗装され、V型8気筒エンジンのカバーや、その周囲のカーボントリムにもカスタム処理が施されているのが分かる。 2010年4月というから、458イタリアとしてはかなり早い時期にデリバリーされたこのモデルは、2016年までエルカンによって所有され、その後チャリティ・オークションにおいて100万ユーロ(約1億2030万円)という価格で落札された。 ここで458イタリア アーミーを落札したオーナーは、約1年間と短い期間それを所有したのみだったが、その後今回の出品者であるオーナーへと受け継がれ、今回再びチャリティ・オークションにかけられることになったというのがこれまでの経歴だ。現在までの走行距離は2万4482km。出品者は落札価格の20%を、セーブ・ザ・チルドレンに寄付し、同時にRMサザビーズは売主手数料を同団体に寄付する計画となっていた。 25万~30万ユーロのエスティメート(推定落札価格)を事前に発表していたRMサザビーズだが、実際の落札価格は46万6250ユーロ(邦貨換算約7675万円)とそれを大きく上回る結果となった。ユニークなフェラーリ・デザインの究極的な表現ともいえる458イタリア アーミー。これほど魅力的なモデルを手に入れる機会は、そう簡単には訪れないはずだ。
AMWノミカタ
まだエルカンが所有している頃に、イタリアでこのクルマを取材したことがある。内装は新車同然とは言えないが、エルカンが日常的に乗っていたのだろう、使い込まれた様子が伺えた。しかし、そのヤレ感もアーミー仕様の雰囲気にマッチしていたのを覚えている。もし、テーラーメードで同じような仕様をオーダーしたらフェラーリは受けてくれるのか? ラポ・エルカンだったからこのようなオーダーが通ったというのが本当のところだろう。そう考えると、アーミー仕様の貴重な1台ということになる。そして最後に、室内はかなりきつい「香り」だったことを付け加えておく。
山崎元裕(YAMAZAKI Motohiro)
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