終わり見えない「自宅保育」勧められ…妊娠中に保育園でリンゴ病流行 「かかっておけばよかった」悲痛な声
感染妊婦の6%に胎児死亡
検査結果は、幸いなことに、IgM陰性、IgG陽性。過去にパルボウイルスB19に感染しており、現在は感染していないであろうことがわかりました。症状が出なかった上の子の登園も再開させ、安心して仕事に復帰できました。妻とは「とにかくホッとしたね」と言い合いました。 感染が疑われる妊婦に対しては、IgM抗体の検査のみ保険適用で、IgG抗体の検査は自費になります。かかった金額は3000~4000円でした。 妻は「こういう思いをしないように、妊娠時の検査にリンゴ病の免疫の有無がわかるものを入れておいてほしかった」「片方が保険適用で、片方が自費というのもわかりにくい」とぼやいていました。 妊婦のリンゴ病感染に詳しい元神戸大学医学部産科婦人科学分野教授で医師の山田秀人さんに話を聞きました。 2013年に発表された厚生労働省のリンゴ病の全国調査で主任研究長を務め、現在は手稲渓仁会病院・不育症センター長を務めています。 大人になってからかかると重症化することが多い病気は、「小さいころにかかっておいた方がいい」と言われることがあります。リンゴ病について、山田さんは子どももまれに重症化することもあるため、「かかっておいた方がいい」とは言えないとします。 その上で「現状、ワクチンや胎児への感染の予防法がないので、そのように母親が感じてしまうことはよく理解できる」とし、「だからこそ一般的な感染対策が大事」だと強調します。 「感染者の咳やくしゃみを吸い込まないようにマスクをすること、感染者と食器などを共有しないこと、子どもにキスをしないこと、よく手を洗うことやこまめにうがいをすることが感染予防になります」 山田さんによると、リンゴ病は「初感染妊婦のうち6%が胎児死亡になり、4%に胎児水腫(胎児の胸や腹に水が溜まったり、全身に浮腫を来たす重い病気)が起きるという報告」があるとのこと。「リンゴ病は他の病気と比べて、流産・死産の原因になることがあまり知られていない」と警戒を呼びかけます。 「教育・啓発により流産・死産のリスクを減らすことができるので、ぜひより広く知られてほしい」と訴えていました。 リンゴ病という病名自体は、聞いたことがある人も多いであろう、ありふれたものです。しかし、立場が変わるとそのリスクも大きく変わるというのは、社会の中で違う立場の人を思いやる上でも、ハッとする経験でした。