「首をノコギリとメスでちょん切ってバケツに」伝説の社会部記者が伝えた“首なし事件”の真相〈警官の拷問を告発するため…〉
日本で最も有名な弁護士
私は高校生のころに、朝日新聞論説委員の扇谷正造が編纂した『私をささえた一言』(青春出版社)を読み、正木の存在を知った。これは著名人100人を支える言葉を集めた新書だが、その中に、 〈今日にいたるまで、自己の良心を売らずに何やかやと、生計を営なみ、権力悪と闘ってこられた〉 という正木の一文があった。 ――なんと格好のいい言葉だろう。 私はほれぼれとした。 首なし事件の後も、正木は三鷹事件や静岡県の丸正事件、山口県の八海事件、大分県の菅生事件など、全国各地の冤罪や再審事件を十数件も手掛け、日本で最も有名な弁護士になっていた。 ※本記事の全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています。この連載「 記者は天国に行けない 」を第1回から一気にお読みいただけます。 第1回 源流の記者 第2回 アパッチ魂 第3回 第一目撃者 第4回 文と度胸 第5回 悪郎伝 第6回 「墓場に持って行かせるな」30年を超えて暴かれた電力業界の闇 第7回 執着の先のバトン 孤独な調査報道を結実させた記者たち 第8回 母は無罪だった 警察発表は疑いながら聞くものだ――オンライン記者が嚙み締めた教訓 第9回 畳の上で死ねなかった人々 第10回 赤旗事件記者 第11回 「たたずまい」の現在地 第12回 くちなしの人々 第13回 密やかな正義 第14回 メディア渡世人 第15回 パブリック・エネミーズ 第16回 朝駆けをやめたあとで 第17回 わたしは告発する 第18回 弱い人を台なしにしやがるのは人間どもだ 第19回 「捜査の職人」の遺言 第20回 時代の“斥候” 第21回 ローリングストーン 第22回 座を立て、死角を埋めよ 第23回 「やるがん」の現場へ 第24回 情けをかけてはいけません 第25回 辞表を出すな 第26回 奇道を往く 第27回 スカウトは獲ってなんぼや 第28回 それが見える人 第29回 誰も書かないのなら 第30回 OSが違っていても 第31回 志操を貫く 第32回 曲がり角の決断 第33回 告発前夜 第34回 独裁者の貌 第35回 悪名は無名に勝るのか 第36回 おかしいじゃないですか
清武 英利/文藝春秋 2022年2月号