SNS総フォロワー数65万人超、天文物理学者BossBが「間違えること」を奨励する理由
自分の情熱に従って、子育てに専念した7年間
コロンビア大学で天文物理学を学んで博士号を取得後、カルフォルニア大学サンタバーバラ校や、ドイツのマックスブランク天文研究所で研究員を務めていたBossBさん。高校卒業後、自ら日本を飛び出し、世界のあちこちで学び、働きながら「まるでヒッピーのように」暮らしていた。出産後、宇宙よりも何よりも子どもが愛おしくなり、次男の出産とともに、研究職を辞めて子育てをしやすいカリフォルニアに戻った。 「パートナーは当時、大学院生でした。家族4人分の生活費は、理系の大学院生におりる奨学金に頼っていたので、必然的に貧乏生活。アメリカ政府から配布される低所得者向けのフードクーポンを利用して、毎月、牛乳や卵、小麦粉などをもらって暮らしていました」 宇宙に対する情熱と探究心は、すっかり子どもに移った。 「毎日ご飯を作って食べさせて、低所得者向けのアパートのようなところに住んでいたんですが、うちには朝から晩まで近所の子どもたちが集っていて。みんなで海に行ったり、山に登ったり、動物園や博物館に行ったり、やることはいっぱいで最高に楽しかったです。 私が働いていないからナーサリーに通うこともなく、親と一緒に通える無料の公共の教育機関みたいなところに行って絵を描いたり、体を動かしたり、アルファベットを学んだり。ロサンゼルスには日本語の幼稚園もあるから、そこにも週に2回くらい通っていたかな」 近くに海があり、自然に囲まれた環境で愛する子どもたちとの暮らしに没頭する日々。子どもが駄々をこねる姿までもとにかくかわいくてしょうがなかった。かわいくてしょうがないのは、息子さんたちが大きくなった今も変わらない。 「幼い子どもは母親と過ごす時間が大事とか、そんな教育方針とかではなしに、ただ単に私の心のおもむくままに、情熱から子育てに打ち込んでいました。それが良いことだからとか悪いことだからとか、そういう判断をしていたわけではありません。おやつはアイスクリームかパンケーキどっちにするかって、どちらでもいいじゃないですか。ただ私はアイスクリームが大好きなんだよって、それと同じ感覚です。 当時、自分がやりたいのは研究ではなく子育てだと気がついたから、それに打ち込んでいた。働きたいとか、自分自身の時間が欲しいとか、そうもし思うことがあったのなら、そちらを選ぶこともあったでしょう。でも、私はそう思わなかったので、選ばなかった。ただただ、愛にあふれた7年が過ぎました」 息子さんたちと密に過ごす時間が終わったのは、子どもの成長がきっかけだった。 「子どもにとって、私という存在が四六時中必要でなくなったんですよね。なんでかって、それはもう、学校の友だちと遊んでいる方が楽しいからです」 そこで、自分も何かに挑戦してみようと思い立ったBossBさん。まず始めた仕事が、パートタイムのキックボクシングインストラクターだった。 「育児中唯一の自分の時間としてジムに通っていたのですが、気がついたら私のファンみたいなおばちゃんがたくさんいて、その人たちが『あなたに教えてもらいたい』って言うから、じゃあやってみようかなと」