講談師 六代目 神田伯山「あんみつ」を語る「あんみつは、お店で食べるに限ります」|みはし(上野本店)
「あんみつ」は講談と同じようにライブに限る
北米の男子バスケットボールのプロリーグに喩えて、『みはし』のクリームあんみつについて熱く語る伯山さん。 「軽いのに満足感があって、素晴らしい〈作品〉だなと思います」 伯山さんのあんみつの魅力語りは、まだまだ続く。 「自分もこういう芸人になりたいなって思うんです。あんみつって気軽な食べ物ですよね。つまり入口が広い。『みはし』さんのあんみつはというと、その広い入口から入ったら、奥がぐんと広かった、という感じです。講談師としても、気軽に楽しめて、でも実は奥深い講談の魅力に気づいてもらえる、そんな芸人を目指しています」 講談の奥深さと『みはし』のあんみつには共通するものがあるという伯山さん。 「『みはし』さんのあんみつに魅了されて以来、あんみつを見かけると食べるようになったんですね。どのあんみつも美味しい。でも、やはり『みはし』さんに戻ってくるんですよ。いやぁ、奥が深い」
ここではみんな笑顔
伯山さんの「『みはし』のあんみつ好き」はつとに知られており、手土産に頂くことも多いそう。 「ただね、やはりあんみつは、お店で食べるに限ります。茶屋という風情の内装だとか、店員さんの対応だとか、そういったものすべてが、総合演出でお客さんに満足感を与えている気がしますね。ここであんみつを食べておるお客さんはみんな笑顔ですからね。あんみつも講談も、ライブですよ」 著名人であっても、ここではひとりのあんみつ好きとして公平に接客される。それが気持ちよく、つい、足を運ぶという。連日、行列ができている『みはし』だが、伯山さんも並ぶのだろうか。 「もちろん並びますよ。さっとあんみつを食べて、さっと立ち去ります。早く後ろの人に譲ってあげたいですからね。それにしても、『みはし』さんの回転率のいいこと。牛丼より速く出てくるんじゃないですかね。待っている間に本を読もうと思っても、5行くらいまでしか読めない。この速さも気持ちがいいですね」 時代に合わせて甘さを少し抑えるなど多少の変化はあるものの、基本的な部分は変えることなく、客をもてなしてきた『みはし』。伯山さんにとって「『みはし』のあんみつ」は同僚のような気ごころの知れた存在なのかもしれない。 ・六代目 神田伯山(かんだはくざん) 1983年、東京生まれ。2007年、三代目神田松鯉に入門。2012年、二ツ目昇進。講談会や寄席のみならずテレビやラジオで人気を博し、講談普及の先頭に立つ活躍をしている。2020年、六代目神田伯山を襲名。著書多数。レギュラー番組にTBSラジオ『問わず語りの神田伯山』がある。撮影/橘蓮二 ・上野公園前 あんみつ みはし上野本店 東京都台東区上野4-9-7 電話:03・3831・0384 営業時間:10時30分~21時(20時30分最終注文) 定休日:不定 交通:JR上野駅不忍口から徒歩約3分 取材・文/平松温子 撮影/湯浅立志 ※この記事は『サライ』本誌2024年9月号より転載しました。
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