ケニアの巨大スラム街との出会いで人生が一変 「朝起きれたら幸せ、今日もなんかいい感じ」
トゥルカナ湖に行けないおかげ「SHIFT80」発祥の地へ
奥 祐斉:そんなミギーさんは、旅をしている中でアフリカに出逢ったんでしょうか? 坂田ミギー:世界一周前にも、アフリカには何度か行ったことがあります。レソトに1回、モロッコに2回、南アフリカに3回。私は元パリピなので、当時は音楽フェス目当てで、南アフリカのケープタウンを中心に行ってたんですよ。 そのあとの世界一周では「せっかくだし行ったことのない国に行ってみよう」と思って、ケニアに寄りました。ケニアに対して強い興味があったわけではないのですが、通り道だし寄っておこうかなくらいの感じです。 ただ、人類発祥の地と言われているトゥルカナ湖がケニア北部にあるから行ってみたかったんですよね。でも、治安が悪すぎて、強盗も出るから行けないよって、たくさんの旅行会社に断られて、「行けないんじゃ~ん!」となり、やることもなくなってぼーっとしてたら、ナイロビに大きなスラム街があったんですよ。 奥 祐斉:なるほど。じゃあ、アフリカのケニアっていうのも偶然なんですね。 坂田ミギー:そうですね。世界一周してるのにスラム街には行ったことがないなと思って。行ってみたいなと思って調べたら、スラムコミュニティの人たちの主催しているスラムツアーがあったんです。それに参加してみたら意外と面白い。面白いと表現するには語弊がありますけど、思っていたのと印象が違って。 スラム街は陰鬱として、絶望しかなくて、淀んだ空気があって……のような先入観だったんですけど、行ってみるとめちゃくちゃ活気がある。子どもたちは元気だし、お母さんたちは揚げパンとか野菜とか並べて笑顔で商売をしてたり、私の想像していたスラム街じゃ全然なくて、それでさらに興味が湧きました。
朝起きれたら幸せ。今日もなんかいい感じ
奥 祐斉:ミギーさんのプロフィールを見ていると、無茶苦茶いろんなことをされているじゃないですか。“ギリシャのヌーディスト・アイランドで全裸のテント暮らし“とか、なんかもう全部カオスで、ストロングワード満載すぎて、記事に絶対しない方がいいと思うんですけど(笑)。その中でも、“ケニアのスラム街で地元アーティスト集団と密造酒を飲みまくった”と書いてますけど、事業をするうえで「ケニアに決めた」きっかけってあるんですか? 坂田ミギー:スラムに通ってるうちに、だんだん友達が増えていったんです。密造酒を一緒に飲んでいたアーティストチームもそうなんですけど、日本に住んでいた頃の私よりもかなり過酷な環境、厳しいシチュエーションで生きているけれど、みんな楽しそうだなと思って。“朝起きられたら幸せ。明日もきっと良くなるだろうし、今日もなんかいい感じ” みたいなことを言うんですよね。まず「朝起きたら幸せ」って、私日本にいる時思ってなかったなって。朝起きたら、「あ~仕事か……。あれもやんなきゃいけないし、トラブル対応もしなきゃ」とか思ってました。なのに、朝起きて幸せと言える人たちが、こんな場所にいるのかと思って衝撃を受けました。 自分の心を救ってくれたのが、このスラムの人たちなんです。自分が助けてもらったから、次は、私が何か恩を返せたらいいなと、今この事業をやっています。 奥 祐斉:確かに、社会課題はあるというか。でも、僕は特にアフリカに関しては、いつも逆説的に考えてしまって、そんな風に幸せに生きてる人たちがアフリカには沢山いて、“何も変わらなくてもいいんじゃないか”って思う側面ってないですか? 坂田ミギー:あります。「経済成長した方がよかろう」は、あくまでも我々の考えです。変わらずそのままの方がいい部分はたくさんあります。 奥 祐斉:とはいえ、アフリカの人たちは、やっぱり生活水準を上げたいとか、モノが欲しいっていうのもありますよね。でも、我々(日本人)は、既に通ってきたからわかる、見える世界もあるじゃないですか、経済成長的に。 だから、どんな思いで活動されているのかなっていうのは、結構僕は皆さんに聞いちゃうんですよね。アフリカに対して、最初は何か困ってる人に手を差し伸べることはできないかな?と思って関わる人が多いと思うんですけど、現地に行ってみると、「あれ?僕たちよりも豊かかも?」みたいなことって、よくあるじゃないですか? 坂田ミギー:めちゃくちゃわかります。私の場合は「不幸になる人を減らしたい」思いでやっています。幸せは彼らの価値で決めるものなので、私がどうしたいというのはないです。ただ、病気なのに治療ができないとか、学校に行きたいけど学費がなくて通えないとか、お腹が空いてるけどご飯を食べられないとか、そういうのをなくしたい。私の思う方向に、みんなを走らせようとかは全く思っていないです。現地の人たちがやりたいこと、その背中をほんの人差し指一本くらいでも応援できたらいいなというだけです。 奥祐斉:なるほど。僕も一緒です。たまたま出会った人が、不可抗力とか、なんか理不尽なことによって自分の人生を歩めていなかったりすると、放っておけなくなるタイプなので、とても近いものを感じました。