“環境派”イーロン・マスクが、温暖化を信じないトランプに及ぼす影響は?
トランプの大統領選勝利に貢献したイーロン・マスクだが、彼らのあいだにはちょっと気になる、大きな食い違いがある。それは、マスクは地球温暖化を信じているが、トランプはいまだにその科学的事実を嘘だと思っている点だ。環境問題において、マスクがトランプの意見に影響を与えることはあるのだろうか? 【画像】この後に及んで、気候変動を「インチキ」だと豪語するドナルド・トランプ 「環境派」「気候変動積極支持派」を自称してきたイーロン・マスクが次期米国大統領として熱心に支援した候補は、世界規模の気候変動を「インチキ」呼ばわりする男だった。 こうしていまではドナルド・トランプがホワイトハウス入りを控えているわけだが、ここでひとつ重大な疑問がある。気候変動とクリーンエネルギーに関するマスク自身の見解は、新政権にどれだけの影響力(があると仮定した場合だが)を及ぼすのだろうか? トランプは大統領選挙期間中、テスラの最高経営責任者(CEO)でビリオネアのマスクとの親交が深まるにつれて、電気自動車(EV)への口撃を明らかにゆるめた。それまで何ヵ月もひたすらプラグイン電気自動車(PEV)を酷評し、販売停止を約束していたトランプだったが、2024年夏はそうした非難のトーンを若干落としたのだ。 トランプはミシガン州の聴衆に対し、「EVについてはいつも話しているが、反対しているわけではない。全面的に賛成だ」と発言した。 「EVは自分も運転したことがある。信じられないくらい素晴らしいが、すべての人に向いているわけではない」 その頃マスクは、トランプの態度が明らかに変化したのは自分の功績だと主張し、6月に開かれたテスラの年次株主総会では、同社の株主らに「自分には人を説得する力がある」と発言した。トランプについてはこう述べている。 「彼の友人の多くがいまやテスラの持ち主で、自身のテスラをとても気に入っている。さらに彼は、電動ピックアップトラック『Cybertruck(サイバートラック)』の大ファンだ。そういうことが重なった結果ではないかと思っている」 投票日当日の夜をトランプの邸宅マール・ア・ラゴで過ごし、次期大統領の家族と集合写真に収まったマスクは、今後数ヵ月のうちにホワイトハウスと直通電話でやりとりできる地位を得ると見込まれている。 「テスラ」や「スペースX」といったマスクが創業した会社は、すでに連邦政府機関との契約や連邦政府の政策による利益が数十億ドルある。彼は、これを機にさらなる利益誘導を図ろうとしていると見られている。 だが、マスクのいう「説得力」が、気候問題などほかの分野でも発揮されるかどうかは現時点では不明だ。 アメリカン大学環境政策センター講師のポール・ブレッドソーは、「それこそが重要な問題です」と言う。 「マスクはテスラとスペースXの利益のみを主張しているのか? ただの利己的なロビイストか? それとも、トランプを変えようとし、クリーンエネルギーこそ米国が中国に勝つ大きなチャンスを生み出す経済問題なのだと認識させようとしているのか?」 マスクと、トランプの政権移行チームはコメント要請に応じなかった。