“環境派”イーロン・マスクが、温暖化を信じないトランプに及ぼす影響は?
地球温暖化に怯えていたはずなのに…
地球温暖化とエネルギー政策に関するトランプの見解は明らかだ。彼は、地球がますます暑くなっていることを疑っている(温暖化が進行しているのは間違いないという点で科学者は一致している)。 気候変動についても、「今後400年間で海面は0.3センチ上昇する」と誤って伝えている(過去100年で、海面は平均約20センチ上昇した。氷河と氷床は今後も溶解が進み、海面は2100年までに数十センチ上昇すると予想されている)。 トランプは、温室効果ガスの排出抑制を目指して196ヵ国が誓約した、2015年のCOP21パリ協定から再離脱すると請け合い、太陽光パネルと風力タービンを非難した。大統領選の勝利宣言では集まった支持者に対し、現在記録的水準にある米国の石油生産をさらに増産するとしたうえで、「米国は世界のどの国よりもカネになる液体の埋蔵量がある」と述べた。 トランプと対照的にマスクは、「気候変動は問題だと考えている」と繰り返し発言しているが、問題の緊急度についてはまちまちだ。彼は長年、太陽光発電、蓄電池、EVなど、温室効果ガス低排出技術への移行を強く訴えてきた。 ウォルター・アイザックソンが2023年に出版した伝記『イーロン・マスク』には、マスクは大学生だった頃、地球温暖化の危険性と世界的に化石燃料が枯渇するとの見通しに不安を覚え、太陽光発電とEVに興味を持つようになったと書かれている。 テスラは広く人気を博するEVの量産に成功し、一気に世界的産業へと発展させた。また、テスラは屋根設置型太陽光パネルや蓄電池の販売も手掛けている。それは、家庭にバックアップ電源を供給する一方で、送電網における風力発電と太陽光発電のバランスを高めることにもつながる。2024年、蓄電池部門はテスラの収益の約10%を占めている。
Brad Plumer