<上海だより>シェア自転車の児童事故死(下)なぜ欠如?交通意識改善の議論
THE PAGE
前回の記事では、シェアリング自転車産業の勃興で賑わう中国で、12歳未満の児童の自転車利用が法的に禁止されているにも関わらず、小学校四年生の児童がシェアリング自転車利用中に交通事故死した事件が話題になっている、という内容をお伝えしました。 <上海だより>子どもの登下校は保護者送迎が当然、おばあちゃん出動も普通
実際の事故現場を見てみると、自転車に乗っていた児童と左折しようとするバスの間の一角は工事現場となっており、2メートルを超えると思われる大きなフェンスが交差点の内側にまでせり出していました。 児童がいたと思われる方の視点から見てみると、そのフェンスに視界が遮られ、左折して向かってくる車はかなり前方まで行かないと確認できません。 日本であれば、ここまで車道にせり出した工事を行なっている場合は、交通整備の担当者が常時配置されているはずですが、事故発生後にも関わらずそれらしき人も見当たりません。なぜこのような事故が発生してしまったのか、という根本的な意識が欠如していると言わざるを得ません。 また、この事件における責任の所在ももちろん重要ですが、一方で12歳未満の児童に自転車を乗らせないよう徹底しよう、という多くの中国国民の声が目立つのは何故なのでしょうか? 法的な説明は前回の記事で触れていますが、それ以上に大事なのは安心して児童が自転車を乗れる環境なのか、という問題です。 以前から中国における交通マナーの悪さは交通事故件数の多さは取り上げられていますが、世界保健機関(WHO)が2015年に発表したデータからも、中国の交通事故による死者26万1367人(2013年)という極めて危険な交通事情がわかります。やはり、日本と比べた場合には、お世辞にも安全と言える状況ではありません。
しかし、それでも小学生の高学年ともなるとやはり自転車に乗りたくなるものです。少々言い方は悪いかもしれませんが、当の大人たちが法律で定められているルールを守れていない中国の現状を見ると、法律上12歳未満の児童は自転車禁止なのだから利用させないようにしよう、という議論自体に無理が生じることは容易に考えられます。 むしろ日本がそうであるように、小学生の段階から家庭内の教育や小学校での講習を通じて自転車の正しい、安全な乗り方を教えることが、最も児童の安全を第一に考えることなのではないでしょうか? 学校の登下校に保護者送り迎えが当たり前という記事も以前に書きましたが、児童を守りたいという思いには変わらないと思うものの、過保護になっていては当の児童本人の意識が芽生えません。