11年のプロキャリアを過ごした伊藤駿、現役引退に際して思うこと「選手たちにはファンの存在を励みに毎試合に臨んでほしい」
「バスケから離れよう」と思った大学時代
10月10日、サンロッカーズ渋谷、秋田ノーザンハピネッツ、富山グラウジーズでプレーした伊藤駿が自身のインスタグラムで現役引退したことを発表した。東北の名門・明成高校(現仙台大学附属明成)の1期生として強豪の礎を築き、青山学院大でも中心選手として黄金期を経験。プロとしても11シーズンにわたって第一線で活躍したポイントガードに、引退を決めた今の思いや自身のバスケットボールキャリアについて語ってもらった。 ──もう『伊藤選手』でなく『伊藤さん』ですね。現役生活お疲れ様でした。引退した今の率直なお気持ちを聞かせてください。 率直な気持ちは…なんというか、終わったなって感じです。 ──意外とあっさりしていますね。 はい、ネガティブな気持ちでは全然ないです。 ──引退後はどういった道に進まれるんですか? バスケットとは関係のない企業でサラリーマンになります。ありがたいことに、プロ選手としてのオファーもいくつかいただいていたんですが、昨シーズンくらいから心身両面でしんどさを感じるようになってきたので、これは潮時だなと。今は、新しい環境に飛び込むことが楽しみですね。ちょっと語弊があるかもしれませんが、毎日準備して、練習して、試合して……という生活から離れるという点で、プレッシャーから少し開放された日々を過ごせるんだろうなと想像しています。 ──ご自身のバスケットボール人生を振り返って、プロとして活躍する未来は想像していましたか? バスケを始めたのは確か小学2年生か3年生だったんですけど、文集とかに『バスケットに関わる仕事がしたい』と書いていた記憶はありますね。そこから「それを達成するためには?」と逆算で進路を選択していって、青学を卒業する少し前に「プレーヤーとして行けるんじゃないか」と思えるようになった感じです。とは言え、大学の時には一度「バスケから離れよう」と思ったことがあるんですよ。 ガードの先輩がみんなめっちゃうまかったんで。渡邉さん(渡邉裕規=宇都宮ブレックス)、竜馬さん(橋本竜馬=越谷アルファーズ)とか本当にエグくて、1年の時は「自分はちょっと難しいんじゃないか」って思いました。 ──そこから「頑張ろう」と思えた理由は何だったんですか? 親ですかね。親が高いお金を払って大学に行かせてくれていると気付けたのが、一番大きかったのかなと思います。ウチがカツカツの生活だったのは子どもながらに分かっていて、寿司屋に行っても気を遣ってお稲荷ばかり食べていましたし。あらためて「親のためにも頑張ろう」って思って、3、4年はトーナメント、リーグ、インカレとすべてのタイトルを取りました。 ──その他、大学時代に印象深いことはありますか? 大学に入るまで、僕ってすごくきっちりした人間だったんですよ。物事は100%綺麗にこなさなきゃいけないとか、自分が一番正しいみたいな脳みそだったんです。ただ、大学に入っていろんな人と接していくうちにそうじゃないんだなって思えるようになりました。なんというか、面白く成長できた4年間だったなって思います。お金がなくて、牛丼屋のタレを大量に持ち帰って白米にかけて食べたりしていましたけど(笑)。