田野優花主演のダークエロス『ぼくらのふしだら』の普遍性 欲望に支配される人間の怖さ
映画『ぼくらのふしだら』が1月3日より全国順次公開される。大見武士が『月刊ヤングキングアワーズGH』(少年画報社刊)で連載したダークエロス『ぼくらのふしだら』を、映画『青鬼』を手掛けた小林大介が実写映画化した。主人公・結城美菜実を演じるのは、『13月の女の子』『近江商人、走る!』などの映画や舞台に出演する田野優花。彼女の前に突然現れる種族も性別も謎の存在・ササヤキを演じるのは、“可愛すぎるフェチ系コスプレイヤー”としてグラビアを中心に活動するかれしちゃん。美菜実が心を許す幼なじみ・信一を、ドラマや恋愛リアリティ番組などに出演する植村颯太が演じている。 【写真】田野優花のベッドシーン 美菜実は「溢れる性欲と引き換えに時間停止能力を手に入れた」高校生。時間を止めるたびに肌に刻まれた「性欲カウンター」の数値が上がっていき、性欲は増していくために、幼なじみの信一に身体を預ける日々……というあらすじのみを見ていると、その過激さに思わず閉口してしまう人も多いのではないだろうか。 しかし、「時間停止能力」を手に入れた美菜実が、「いい奥さんになりそう」というセクハラ発言とともに、彼女の弱みを握り迫ってくる担任教師(岩永ひひお)や、彼女の大学進学に反対し、妻が遺した娘のための学資保険を使い込む父(中村公隆)を、次々とその力でねじ伏せていく姿を見ていると、これは意外と単純な「エロ」だけを描いた話ではないのかもしれないと思えてくる。 彼女の抑えきれない性欲の話は、同時に、抑えきれない欲望に導かれるまま突き進んだら何が起こるかを描いた話でもある。さらに厄介なことに、憎い相手を貶める手段として、彼女が行う新手の呪詛のようなやり口は、一見スマートなようで一筋縄ではいかないシステムになっているために、人間の滑稽さが滲み出たりして、妙な可笑しみがあったりもする。『ぼくらのふしだら』は、人が自身の欲望のリミッターを外したらどうなるかを描いた、実験のような映画だ。 「人生の選択肢は学歴に比例している」と考え、大学進学のための努力を惜しまない高校3年生・美菜実は、指定校推薦のために柄でもなく生徒副会長に名乗りを上げるが、緊張のため始業式のスピーチで失敗してしまう。そんな彼女の前に現れたのは「一番欲しているものと一番必要のないものの両方を人に与える能力」を持った謎の存在・ササヤキである。そこで美菜実は一番欲しているものとして、成績をあげるための「時間停止能力」を得る代わりに、彼女にとって一番必要のないものである、能力を使う度に増大する性欲という厄介なものを与えられてしまう。