立命大V、勝負を決めた秘策「テキサス」…法大監督「試合を通じて布石あった」と脱帽
アメリカンフットボール・全日本大学選手権決勝「第79回甲子園ボウル」(15日・甲子園球場)――立命大(関西1位)が45―35で法大(関東1位)を破り、9年ぶり9度目の優勝を飾った。立命大は、試合開始早々にRB山崎大央(だいち)のTDで先制すると、一度も追いつかれることなく、点の取り合いを制した。2年連続出場の法大は18年ぶりの頂点に届かなかった。年間最優秀選手(ミルズ杯)と甲子園ボウル最優秀選手に立命大の山崎、同敢闘選手には法大のQB谷口雄仁が選ばれた。
「甲子園ボウル用に温めていたプレー」
そのランプレーの名称は「テキサス」という。立命大は、米テキサス州の大学から着想を得たトリックプレーを、最も効果的な場面まで残していた。
3点差に迫られた第4クオーター。ゴールまで残り28ヤードの攻撃で、QB竹田は主将の山崎、続いて蓑部の両RBにボールを渡すふりをして、相手守備陣の注意を引きつけた。実際に手渡したのは、左サイドから走り込んできたWR仙石。ぽっかり空いた右のスペースを、普段はパスを受けるのが役割の仙石が駆け抜け、勝負を決めるTDを奪った。蓑部は「甲子園ボウル用に温めていたプレー」と胸を張った。
第1クオーター最初の攻撃プレーで60ヤードを走って先制TDを挙げた山崎と、蓑部のランは、とてつもなく大きな推進力となった。2人のランで計339ヤードを獲得。「テキサス」は、2人が徹底的にマークされることを見越しての秘策だ。第3クオーターにもランと思わせ、竹田がパスを投げるスペシャルプレーでTD。法大の矢沢監督は「試合を通じて布石があった」と脱帽した。
立命大は個々が高い身体能力を持つ集団ながら、2015年を最後に甲子園ボウル優勝から遠ざかっていた。足りなかったのが、戦術のスポーツと言われるアメフトにおいて重要とされる準備だ。今季は、そこをおろそかにせず、リーグ戦から日本一を見据えてプレーを磨いてきた。
「やってきたことは間違いじゃなかったと証明できた」と山崎。新時代の到来を告げる9年ぶりの栄冠だった。(松本慎平)
法大は関学大(関西2位)を破った準決勝に続く関西の強豪からの勝利はならなかった。矢沢監督は「立命大の方が一枚も二枚も上手。完敗です」と振り返ったが、第4クオーターに一時、3点差にまで詰め寄るなど最後まで相手を苦しめた。QB谷口は「悔しい気持ちもあるが、最後の瞬間まで楽しかった」。主将のDL山田も「全部出し切った」と満足そうだった。