糖尿病は肥満・やせ・普通体型によって治療法が異なるってホント?【医師解説】
糖尿病は体型によって治療法が異なるの?
編集部: 糖尿病は普通、やせ、肥満など体型によって治療法が異なるというのは本当ですか? 乾先生: 本当です。先ほどインスリンがうまく働かなくなる原因に「インスリン分泌低下」と「インスリン抵抗性」があると説明しましたが、肥満がある方はインスリン抵抗性が高い方が多いので、まずはインスリン抵抗性を下げるタイプの薬で治療をはじめていきます。 逆にやせ型の方はインスリン分泌が低下している方が多いため、インスリン分泌を促進するタイプの薬で治療をはじめていきます。 編集部: もう少し詳しく教えてください。 乾先生: まず普通、肥満、やせといった分類には見た目のイメージだけでなく判定の基準があります。体重(kg)を身長(m)で2回割って算出するBMI(Body Mass Index)という数値があり、これで分類しています。 日本では一般的に日本肥満学会の判定基準が使われており、BMI18.5未満をやせ型、18.5以上25未満を標準体重、25以上を肥満と定義しています。この数値を参考に体型にあわせた治療を考えていきます。 編集部: お薬も違ってくるのですか? 乾先生: 現在日本で使用可能な経口薬は大きく9系統に分けられています。 インスリン分泌を促進する系統には、『血糖値に関係なく作用する(血糖非依存性)薬剤』として「SU薬」「グリニド薬」と『血糖値が高い時に強く作用する(血糖依存性)薬剤』として「DDP-4阻害薬」「GLP-1受容体作動薬」「イメグリミン」があり、インスリン分泌を促進しない系統としては、「チアゾリジン薬」「ビグアナイド薬」「α-GI薬」「SGLT-2阻害薬」があります。 生活習慣や年齢などにもよりますが、一般的にはやせ型でインスリン分泌低下が主体の方にはインスリン分泌促進系薬を、肥満がありインスリン抵抗性が高い方にはインスリン分泌非促進系薬を、そして食後高血糖が主体の方にはα-GI薬を選択していきます。 特に肥満が強い方には、体重減少効果が期待できるGLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬を選択するケースもあります。 編集部: 糖尿病というと肥満というイメージがありますが、やせ型のケースもあるのですね。 乾先生: アメリカの糖尿病患者さんは、BMIが平均30を超えていてかなりの肥満です。一方、日本の糖尿病患者さんのBMIは平均25前後で、肥満の一歩手前くらいでも糖尿病になる方がたくさんいます。 これは、日本人が欧米人よりもインスリン分泌能が低いことや内臓脂肪がつきやすいことが原因だと考えられています。 さらに高血圧や脂質異常症といった生活習慣病のある方は骨格筋のインスリン抵抗性が高いという報告もあり、肥満がなくても潜在的な糖尿病のリスクとなるため注意が必要です。 編集部: 体型に関わらず気をつけるべきことがあれば教えてください。 乾先生: 肥満・非肥満の方に共通して言えることですが、「体力のなさ」「日常的な活動量の少なさ」「脂肪摂取量の多さ」などはインスリン抵抗性に悪影響をもたらします。 食生活では、「甘いものや炭水化物を摂りすぎない」「油っぽい食事は控える」などの工夫が重要で、運動面ではウォーキングやジョギングの習慣がおすすめです。 有酸素運動により筋肉への血流が増えると、血液中の糖がどんどん細胞の中に取り込まれ、血糖値が低下します。また筋力トレーニングで筋肉が増えることで、インスリン抵抗性が改善して血糖が下がりやすくなります。 編集部: 最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。 乾先生: 運動が苦手な方や、忙しくて時間が取れない方は、通勤で1駅分だけ歩いたり、極力エレベーターではなく階段を利用したり、生活の中でこまめに動くことを心がけましょう。 座りがちな生活をしている人は、こまめな動きをしている人に比べ糖尿病の発症リスクがおよそ2倍に高まるとの報告もあります。ちょっとした生活習慣の見直しで糖尿病に悩まされる方が一人でも減ることを願っています。