「日本人が骨折しにくい理由は大豆」「認知症予防に豚汁」 食の最新知見を専門家が徹底解説!
チーズは優れた「抗サルコペニア食品」
また、フレイルの前段階として、サルコペニア(加齢に伴う筋肉減少症)にも注意が必要である。 「近年、サルコペニア予防のために、高齢者であってもタンパク質を積極的に摂ることが推奨されています。しかし、過剰な摂取は腎臓に負担をかけてしまう。そこで、タンパク質の『量』ではなく、『質』がより重要になってきます」 こう説くのは畜産物利用学、応用微生物学を専門とし、乳製品に詳しい東北大学名誉教授の齋藤忠夫氏だ。 「チーズには『ロイシン』が豊富に含まれています。タンパク質はアミノ酸で構成されているわけですが、そのうち体内で作ることができず、食事から摂取するしかないものを必須アミノ酸と言います。ロイシンは、9種類の必須アミノ酸の一つです。そして、必須アミノ酸の中でも筋肉量を増やすのに欠かせないのがバリン、イソロイシン、そしてロイシンで、特にロイシンが最も筋肉の生成に寄与することが分かっています。従って、チーズはとても優れた『抗サルコペニア食品』といえるのです」
「魚の摂取量が多いほど認知症リスクが下がる」
さらに、アンチエイジングに励むのであれば、「老化の始まり」となる、ある臓器を若返らせる食材の摂取が欠かせない。医学界にはこんな名言があるという。 〈人は血管とともに老いる〉 愛媛大学大学院の抗加齢医学(新田ゼラチン)講座教授で、若返り研究の権威である伊賀瀬道也氏が言う。 「今では、イワシやサバなどの青魚に含まれる飽和脂肪酸の『EPA(エイコサペンタエン酸)』には血液をサラサラにする効果があり、動脈硬化の予防に役立つことが広く知られていますが、世界五大医学誌の一つ『ランセット』に、その効果が掲載されたのは2007年。20年ほど前は、私を含めた一部の循環器系の専門家が青魚の健康効果を訴えていたもののなかなか浸透しませんでした。実は、青魚が体に良いというのは、意外と最近の科学的知見といえるのです」 この“新しい健康食材”である青魚には血液をサラサラにしてくれる以外にも、さまざまな効果がある。 「EPAは紫外線による肌老化も防いでくれますし、やはり青魚に含まれることで知られるDHA(ドコサヘキサエン酸)には脳機能を高める効果もあり、東北大学などの研究によって、魚の摂取量が多いほど認知症リスクが下がることが明らかになっています」(同)