「日本人が骨折しにくい理由は大豆」「認知症予防に豚汁」 食の最新知見を専門家が徹底解説!
すさまじいパワーを秘める新芽ブロッコリー
疲労対策を行い、「食べる力」を十分に漲らせる。その上で、食に期待することの一つといえば、病気予防であろう。 「ブロッコリーを食べると、がん予防に役立つ『スルフォラファン』という成分が体内で生成されます」 と言うのは、食品機能化学を専門とする名古屋大学名誉教授の大澤俊彦氏だ。 「アメリカのジョンズ・ホプキンス大学医学部のポール・タラレー教授の実験で、次のことが明らかになっています。発がん性物質を投与したラットを二つのグループに分け、一方には成熟ブロッコリーから抽出したスルフォラファンを与え、もう一方には与えなかったところ、後者の腫瘍発生率は66%であったのに対し、前者では26%にとどまったのです」 特にすさまじいパワーを秘めているのが、発芽後3日目の新芽ブロッコリー「スーパー・スプラウト」だ。 「100グラムあたりのスルフォラファン含有量は、成熟ブロッコリー12ミリグラムに対し、スーパー・スプラウトは258ミリグラムで、実に21.5倍。成熟ブロッコリーを1週間で1キログラム食べて発揮されるがん予防効果が、スーパー・スプラウトの場合、50グラム程度で達成されることになるのです」
骨は脆いのに骨折しにくい日本人
健康寿命の延伸を邪魔する“敵”は、無論、がんだけではない。とりわけ中高年にとって、元気に歩き続けられる足腰を保つことは重要だ。自由に歩けなくなると家に閉じこもりがちになり、その先にはフレイル(要介護手前の虚弱状態)が待ち受けている。 「大豆には、素晴らしい機能性成分が多く含まれています」 と、食品生化学が専門である東京大学名誉教授の佐藤隆一郎氏が説明する。 「中でも、『ゲニステイン』という種類のイソフラボンが豊富で、このゲニステインは女性ホルモンに近い活性を示します。そして、骨粗鬆症は大腿骨頸部骨折を招きやすく、寝たきりの大きな原因となりますが、その予防にゲニステインが寄与しているのではないかと考えられているのです」 骨粗鬆症患者の80%以上は女性であり、その主な原因は閉経後の女性ホルモンの低下だとされている。 「欧米に比べると乳製品の摂取量が少ない日本人はカルシウムが不足する傾向にあり、事実、欧米人女性と比較すると日本人女性の骨密度は低く、骨が脆い。ところが、日本人の骨折率は欧米人よりも低いことが分かっています」 骨は脆いのに骨折しにくい。「ジャパニーズ・パラドクス」と呼ばれる矛盾である。 「この謎を解く鍵として、イソフラボン説が語られています。閉経後に女性ホルモンの分泌が激減した分を、女性ホルモン様活性を発揮するゲニステインが補ってくれるという考え方です。豆腐、みそ、納豆と、世界に誇るべき大豆食文化のおかげで、ゲニステイン摂取量の多い日本人女性は比較的骨折が少ないと考えられます」