「ウルトラマンシリーズ」でどれだけ儲かった？今1番キテる…円谷プロの経営を大解剖
「200→5人」の大リストラ、何があったのか？
円谷プロは第1次～第4次に至るまでウルトラマン怪獣ブームに踊らされ続けた。「5年サイクル」という言葉があり、火がついて10億円の版権収入があっても、翌年0.5億円と桁違いに落ちるような急転落下、ただそれに耐えるだけの備えをせずに、儲かれば使い、ブームが去ればリストラを、ということが繰りかえされ続ける。 1973年が最後の黄金期だったかもしれない。『ミラーマン』（フジテレビ）『ファイヤーマン』（日本テレビ）、『緊急指令10-4・10-10』（テレビ朝日）と全国ネットのレギュラー番組を総ナメで円谷プロが制作を担当。1971年のキャラクター商品の著作売上が20億円、1973年には小売ベースで800億円もの経済圏ができていたという。海賊版も横行していた当時であれば昨今の『鬼滅の刃』規模の大ブームであったと推察され、円谷プロの累積債務も一掃された。 だが円谷一族の不幸は、この激動の中で過労のあまりに2代目社長の一氏が1973年、41歳で急死したことに端を発する。 3代目となる次男の円谷皐氏は、派手好きなタイプでこの好調期に銀行借入を増やし、400坪の豪邸やマンション購入、ゴルフ会員権など派手な振る舞いが目につくようになっていた。1974年に第2次怪獣ブームが終息するとそれが急激な財務悪化に転嫁し、第2次ブームで40人から200人まで増やしていたスタッフの多くが解雇され、一時期は正社員の数が5名になることもあった。ツギハギ経営で円谷プロの制作力も徐々に傷んでいく（注9）。 1980年の第3次ブームも翌年にあっけなく終わり、そのときにも制作部の解体で大ナタが振るわれる。 注9：円谷英明.ウルトラマンが泣いている──円谷プロの失敗.講談社現代新書.2013年
TBS・東宝と関係悪化？円谷プロの経営を苦しめた“ある問題”
何よりこの時期の経営の負の遺産は、その後半世紀にわたって円谷プロを苦しめる著作権問題にあった。 1974年にタイの番組制作会社チャイヨー・プロダクションと合作映画（劇場映画「ジョンボーグA＆ジャイアント」）を作ったが、そのときのチャイヨーへの借金20万ドル代わりに1976年に海外展開の権利をすべて譲渡していたという契約が皐社長が亡くなる1995年に突如日の目にさらされる。 2004年、日本の最高裁判所で円谷氏側が敗訴する結果となったが、その後チャイヨー側が1998年にタイ以外の独占権放棄を条件にバンダイから1億円を受け取っていた事実が2011年に発覚したことをキッカケに、円谷氏側の逆転勝訴につながっていく（注10）。 しかしながらチャイヨー社も2008年に日本のユーエム社に海外での諸権利を譲渡してしまっており、そこから中国代理店のTIGA、ブルーアーク社へと次々と権利委託された中で「公式版とも非公式版とも言えないウルトラマン」が2000～2010年代は円谷版と並行で生み出され続けていた。 海外のみならず国内でも1980年代にTBSや東宝とは決裂、1990年代にはバンダイとの関係悪化などがあり、タニマチのように支えた企業群は21世紀に入るころにはどことも関係が冷えあがっていた。 1996年から平成シリーズで再ブームにはなるが、熊本県で展開したテーマパーク事業「ウルトラマンランド」が3年目からは慢性赤字となる。旧体制からの刷新を図った5代目社長昌弘（一の長男）氏も2004年セクハラ問題で辞任、2005年に6代目社長英明（一の次男）氏が一夫会長と対立で解任動議。2007年に7代目も解任されて再び4代目の一夫氏が社長に戻るといった「お家騒動」は1990～2000年代に円谷ブランドを傷つけ続けた。 注10：円谷英明.ウルトラマンが泣いている──円谷プロの失敗.講談社現代新書.2013年
