【卓球】世界大会や五輪のメダリストの貢献にリスペクトを。日本代表やメダリストは消耗品ではない
かつて日本代表だった人、メダリストでも第一線を退く時に「消耗品のように扱われた」と感じる時があると言う
卓球の世界王者・中国では、大きな世界イベントの時にはレセプションや開会式などで、元チャンピオン、メダリストをステージに上げて紹介することが常である。今の中国卓球の栄光を作った「井戸を掘った人たち」を大切に扱うのだ。 そして中国卓球協会はチャンピオンたちに大きなリスペクトを払い、国家チームの第一線を退くとなれば、それまでの貢献を褒め称え、その後も世界イベントで招待される。若い選手たちはその扱いを見て、さらに大きなリスペクトを抱くのだ。 日本でも有望な若手が次々出てくるとしても、過去のメダリストたちの貢献を考えなければならないし、最高の形で花道を作って欲しい。引退した後も彼らが後輩にアドバイスを与える機会を作ったらどうだろうか。 メダリストとしての経験には彼らでしかわからない戦術や駆け引き、メンタルの持ちようがあるはずだ。それを現役の選手たちが吸収できれば、勝利の継承となっていくはずだ。 2000年以降、日本の卓球界が賑わい、テレビでも取り上げられているのは日本代表が必死に戦い、歯を食いしばって勝利をもぎ取った結果だ。2012年のロンドン五輪からメダルを獲り続けてきた日本。その前後から世界選手権でもメダルを獲り続け、日本は中国に次ぐ卓球強国の地位をキープしている。 たとえば現役を引退した水谷隼さん、石川佳純さん、平野早矢香さんというメダリストはテレビ出演や様々な活動で活躍している。それは間接的に卓球のPRをして、卓球界へ貢献していることだ。 しかしながら、彼らを含めた多くのメダリストたちは強化の中枢や協会の要職には就いていない。唯一、平野早矢香さんだけが協会の理事に名を連ねているが、なぜ彼らは協会や強化のトップに行こうとしないのだろう。 現役を退いたメダリストたちや、日本代表として活躍した選手たちの去り際をこの目で見てきた。拍手で見送られる人もいれば、ひっそりと去っていく人も少なくない。彼らのキャリア、経験からすれば、ある一定期間のコーチ教育を受け、経験を積めば、後輩の指導や今ならTリーグの監督を務めるに値するだろう。 だが、その場に踏み込もうとしない。 アスリートである限り、年齢や経験と関係なく、競争にさらされる。同じ成績、同じようなランキングであれば、将来性のある若手にチャンスが与えられるのはスポーツの世界ではよくあることだ。 かつて日本代表だった人、メダリストでも第一線を退く現役後半に「消耗品のように扱われた」と感じた時があると言う。しかし、日本代表やメダリストの活躍があったからこそ、卓球愛好者たちは胸を張ってきたのだろう。協会にもスポンサーが付いたり、その金額(スポンサーマネー)が上がっていったこともあるだろう。彼らの勝利がテレビの視聴率に影響を与え、ニュースなどで配信されることも多い。 つまり、彼らは単に協会の予算を使っていただけでなく、計り知れないほど卓球界へ貢献をしている。テレビや他のメディアでの露出を一度広告換算してみたらどうなるだろう。彼らに使った予算の何倍ものリターンはあったはずだ。 日本代表や五輪メダリストは消耗品ではない。仮に協会の中での要職に就かないとしても、彼らをリスペクトして、相応の扱いをすれば、それを見ていく次のメダリストたちの励みにもなる。日本卓球の栄光の継承はそういう形として繋いでほしいと思う。 <卓球王国PLUS「今野の眼」より抜粋>
今野昇