不人気仕事からごっそり人が消え、大混乱…トランプ氏がゴリ押し「不法移民1100万人追放計画」の恐ろしい結末
■移民がいなければ、建築業界は存続できない 特に一家建てや集合住宅への影響が大きく、たとえば、人手不足で1年半の建築プロジェクトが完了までに5年程度の時間がかかってしまい、住宅市場が“麻痺”してしまう可能性もあるという。ニューヨークの建設現場では不法移民が多く働いているが、レンガ職人組合の会長をしているティム・ドリスコル氏は、「ニューヨークで建設作業がストップしないのは誰が働いているからか考えてください。働き手を失えば、この業界は存続できないでしょう」という(PBSニュースアワー、2024年10月31日)。 仮に、不法移民が建築現場から一斉にいなくなるような事態になれば、建設作業は一時的に中断せざるを得ず、ニューヨークなどの大都市には“作りかけのビル”が立ち並ぶおそれがある。 このような懸念は建設業界だけでなく、農業界にも広がっている。農産物の栽培、収穫、選別、梱包などの作業には多くの不法移民が従事しているが、この労働力を失えば、米国の食料生産は大きな打撃を受け、価格が高騰する可能性がある。特に米国の食料供給量の約25%を占めているカリフォルニア州への影響が懸念されている。 カリフォルニア州中央部に位置するセントラル・バレーは農業の中心地で、穀物や野菜、果物、ナッツなどが多く栽培されている。この地域で1985年に農場を始めたジューデル・ボスケ氏はテレビの取材に、「心配です。今でもギリギリの状態で、これ以上人手が減っては困ります。オバマ政権下では人手不足に陥って収穫しきれなかったこともありました。メロンを腐らせてしまったのです」と話した(ABCジス・ウィーク、2024年11月17日)。 記者に「失業中の米国人を雇えばいいとの声もありますが?」と問われると、ボスケ氏は「ここの過酷な環境では働きたがりません。摂氏38度以上の暑さと埃のなかの労働です」と答えた。 ■「不法移民は仕事を奪っている」は大間違い また、農家と農場労働者を代表する業界団体の二世農民連盟(NFL)を運営するマニュエル・クーニャ氏は、次のように警告した。 「トランプ氏が公約通り、移民を強制送還したら、国中が大混乱になるでしょう。私の労働者を奪えば、食料が減ります。セントラル・バレーで公約を実行すれば、いっかんの終わりです、国中がストップするでしょう。食べ物が届かなくなるのです」 つまり、このような状況になれば、農場で大量の野菜や果物が収穫できずに廃棄され、スーパーなどの食料品店に届かなくなるおそれがあるのだ。価格の高騰や品切れが起こり、場所によっては野菜売り場の棚が空になってしまうケースも考えられる。 加えてクーニャ氏は「不法移民の労働者が米国人の仕事を奪っているのではない」と主張し、「彼ら(米国人)にはいくら払っても、やりませんよ。朝4時、5時から畑に出て、果物を収穫する仕事ですから」と話した。 最後にクーニャ氏はトランプ次期政権に対し、「すでにこの国でまじめに働いている人たちは容赦してほしい。まじめに働く労働者と、犯罪や児童虐待などに手を染める人たちを区別する必要があります。30年もここで働いてきた彼らを追放することなんてできません」と訴えた。