不人気仕事からごっそり人が消え、大混乱…トランプ氏がゴリ押し「不法移民1100万人追放計画」の恐ろしい結末
■有権者の半数以上が“移民デマ”を信じてしまった 大統領選の投票日まで約1カ月半と迫った9月18日に発表されたスクリプスニュース/イプソスの世論調査では、回答者の54%が「数百万人の移民を強制送還する大規模な取り組みを“強く”、または“ある程度”支持する」と答え、59%が「米国とメキシコの国境の移民状況を注視している」と答えた。 今回の大統領選で移民・国境の問題が経済・インフレと並んで主要争点になった背景には、バイデン政権が移民に寛容だったこともあり、メキシコ国境からの不法入国者が急増し、一時は1カ月で数十万人に達して大問題になったことがある。 しかし、バイデン政権は2024年6月に国境警備を強化し、入国者の数を厳しく制限する対策を講じたことで、翌7月から不法入国者の数は激減し、同政権発足前の低い水準に戻った。 にもかかわらず、トランプ氏は「バイデン・ハリス政権の移民対策は最悪だ。国境を開放したため、世界中から不法入国者が押し寄せた」「アメリカは世界のゴミ捨て場になった」などと激しく批判し続けたのである。 ■深刻な人手不足に陥る恐れも トランプ氏の移民政策は、経済や市場への影響も懸念されている。もし、大量強制送還が実施された場合、米国経済は深刻な打撃を受けると分析する専門家は少なくない。 ペンシルベニア大学ウォートン校の経済学教授、ジーク・ヘルナンデス氏は「米国と米国民にとって経済的な大惨事となるでしょう。被害を受けるのは移民だけでなく、私たち米国民も同様です」と語る。ヘルナンデス教授は「移民は人材、投資、イノベーション、消費、税収に貢献している」と主張し、「これらが失われたら、雇用が減り、経済は縮小し、多様性が失われてしまう」と警鐘を鳴らす(ガーディアン紙、2024年10月30日)。 同教授によれば、不法移民のうち800万人から900万人が労働力に加わり、一般的に米国人がやりたがらない重要な仕事や労働力が不足している分野で働いている。たとえば、建設業、農業、レストランの厨房(飲食サービス業)、製造業などだが、特に多いのは建設業と農業だという。 不法移民が労働者全体のおよそ14%を占めているという建設業界では、短期間で多くの労働者が強制送還されると深刻な人手不足となり、建設費が上昇し、新築住宅の建設が遅れ、多くの地域で住宅が手に入りにくくなるだろうと懸念されている。