【特集】5浪してようやく叶えた“獣医”という夢 しかし待っていたのは「好き」だけでは通用しない“命の現場”「飼い主が任せてくれているありがたみと責任をもっと考えるべき」悪戦苦闘しながら奮闘するアラサー新人獣医師に密着
(巽院長) 「ここの部分が、どんどん骨密度が落ちる感じ。簡単に言うと、腐ってくる感じです。壊死ですね」 後ろ脚の大腿骨頭への血流が減少することで、痛みや骨折といった障害が起こる『大腿骨頭壊死症(レッグペルテス病)』。原因はわかりませんが、1歳に満たない小型犬に多く発症します。 (巽院長) 「強く、強く手術をお勧めします。自分の犬なら迷わずに、すぐにやります。いかに筋肉が細くなる前に手術するか、なんです。筋肉がないと、痛くないのに3本脚のままで走る子になっちゃうんです。せっかくなら、4本を使ってほしいので」 那月の飼い主夫婦は、壊死した骨を除去する手術を受けさせることに決めました。
巽院長は、新人獣医師・荒木留先生にも那月の症状を説明します。 (巽院長) 「ここから、まだ10年15年生きてもらわないとあかんから、それを考えると、絶対に手術を勧めたほうがいい」
“病気を治すことだけが、仕事ではない。飼い主とペットのその後の生活も想定した治療を行うのが、獣医師―” これが、巽院長の一貫した信念です。
那月の手術は、無事に成功。4本脚で地面を蹴って、歩けるようになりました。
『大阪動物医療センター』の診察数は、一日に約130件。獣医師・動物看護師など40人の医療スタッフが治療に当たっています。
荒木先生も、初めて一人で診察することになりました。 (新人獣医師・荒木留先生) 「触診からしていきます。頑張って~」 早く経験を積んで医療技術を身に着けさせるため、新人獣医師にも診察を受け持たせる―それが、巽院長の方針ですが…。
(荒木先生) 「えーっと…うーん…そうですね…」 (看護師) 「…今は、ふらつきもないですよね?足も大丈夫?」 (飼い主) 「大丈夫」 (荒木先生) 「……」 荒木先生、飼い主に何も伝えられないまま、終わってしまいました。
(荒木先生) 「すみません、全然ダメでした」 (巽院長) 「話が下手くそすぎる(笑)間違っていることをしていない限りは、別に問題はない。ただ、無言というのは、『大丈夫かな?』『どうなのかな?』『この先生は大丈夫かな?』という不安がたまっていっちゃうから。その辺はスムーズに話ができるようになると、より良いかな」 (荒木先生) 「はい…」
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