バントでランニングホームラン!? 2024年シーズン、思わず目が点になった“珍プレー集”
2024年シーズンは、セ・リーグは巨人、パ・リーグはソフトバンクが優勝。日本シリーズでは、シーズン3位から勝ち上がってきたDeNAがソフトバンクを下し、26年ぶりの日本一を実現した。そんな激動のシーズンの中で、試合中にハプニング的に起きた、あっと驚く珍プレーや微笑ましくなるよう珍場面、珍事を5回に分けて紹介する。第1回は、「思わず目が点の珍プレー」編だ。 送りバントが“ランニングホームラン”になるという、まさかの珍プレーの主人公になったのが、ソフトバンク・今宮健太だ。 6月25日のオリックス戦、1対0の6回、ソフトバンクは先頭の周東佑京が中前安打で出塁し、無死一塁。もう1点欲しい場面だけに、ここは当然、送りバントだ。 次打者・今宮は、曽谷龍平の初球、外角寄りの高め直球を一塁側に転がした。ここまではよくある話だったのだが、打球を処理した曽谷の一塁送球が大きくそれ、一塁カバーのセカンド・西野真弘の頭上を越える。さらに一塁カバーに向かっていたライト・森友哉も捕球できなかったことから、ボールは無人の右翼席に向かって転々。 この間に一塁走者・周東は自慢の快速を飛ばし、2点目のホームイン。今宮も「(森が)捕っていたらあれ(一塁ストップ)だったので、抜けたのを見てから走り出した。とりあえず一生懸命走りました」と二塁、三塁を回り、滑り込むこともなく、余裕で生還。貴重な3点目を挙げた(記録は犠打エラー)。 「パーソル・パ・リーグTV」も「バントの名手が奇跡を起こす!?」のタイトルで動画を紹介した“今世紀最大の珍プレー”に、現役最多の通算395犠打(2024年シーズン終了時点)を記録の“バントの職人”も「(今までも)バントエラーからのホームランはないですね。きっちりバントを決められて良かったです」と基本に忠実にプレーした結果の“ビッグ・ボーナス”にまんざらでもなさそうだった。 速過ぎるけん制球が結果的に身を助けたのが、ロッテ・佐々木朗希だ。 4月7日のオリックス戦、1-1の2回一死、フルカウントから宗佑磨を四球で出塁させた佐々木は、次打者・若月健矢のときに、一塁へ素早くけん制球を投げたが、最速165キロ右腕の高速けん制球をファースト・茶谷健太は捕球できず、ボールは一塁ファウルゾーンへ。 これを見た宗は「しめしめ」とばかりに二塁へ向かおうとしたが、直後、思いもよらぬハプニングが起きる。 なんと、ボールはフェンスに当たって跳ね返ると、まるで壁当てのように茶谷のもとへ戻ってくるではないか。宗が慌てて帰塁すると、スタンドからも驚きの声が漏れた。 一方、ボールが審判に当たった結果、失点を免れたのが阪神だ。4月17日の巨人戦、3回に森下翔太のタイムリー二塁打で2点を先制した阪神だったが、直後の4回に伊藤将司が四球と安打で無死一、二塁のピンチを招く。 さらに次打者・岸田行倫の送りバントの打球をファースト・大山悠輔が一塁悪送球。カバーに入った中野拓夢も後逸し、ダブルエラーになった。 ところが、本来なら右前に抜けてもおかしくないはずの打球が、土山剛弘一塁塁審に当たり、跳ね返ってきたことから、二塁走者・坂本勇人は本塁を突くことができず、三塁ストップ。無死満塁となった。 そして、この珍プレーが、大山をハッスルさせる。次打者・吉川尚輝の痛烈なゴロを、体を張って止め、先ほどのミスを挽回。さらに二死後、萩尾匡也の一、二塁間の深い打球も逆シングルで好捕、体勢を崩しながらも一塁カバーの伊藤将に今度は正確に送球し、無失点で切り抜けた。 試合はそのまま阪神が2-0で逃げ切り勝利。審判に救われた形の大山も「勝てて良かった」と胸をなでおろしていた。 ◆ 移籍後初安打がまさかの結果に…!? 移籍後初安打が幻と消えてしまったのが、西武・野村大樹だ。 7月9日の日本ハム戦、4日前にソフトバンクから移籍してきたばかりの野村は7番ファーストで先発出場。0-1の5回二死の2打席目、カウント1-1から山崎福也の3球目、カットボールをとらえると、打球は右中間を抜けていった。野村は勢いよく一塁を回り、二塁に到達。移籍後初安打の二塁打と思われた。 ところが、次打者・古賀悠斗が打席に入ろうとすると、山崎が外野から戻ってきたボールをファーストのアリエル・マルティネスに送球し、牧田匡平一塁塁審は「アウト!」を宣告した。 実は、野村は二塁へ向かう際に、右足で一塁ベースの角ギリギリを蹴ろうとしたが、わずかに届いていなかったのだ。 その瞬間をしっかり見届けていたマルティネスがボールの転送を要求。球審がプレーボールを宣告した直後、捕手・伏見寅威も立ち上がって、山崎に一塁送球を指示し、ベース踏み忘れでアウトが成立したという次第。 西武・渡辺久信監督代行がリクエストを要求したが、リプレー検証でも判定は覆らず、スリーアウトチェンジになった(記録は投ゴロ)。 珍プレーで一躍“時の人”になった野村は、翌10日の日本ハム戦の4回に中前安打を放つと、左足で一塁ベースを踏んでオーバーランしたあと、もう一度右足で踏み直し、「踏んでますよ!」とアピール。「X」でも「(2度目の)移籍後初安打」がトレンド入りした。 文=久保田龍雄(くぼた・たつお)
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