打球の行き先はボールに聞いてくれ・加藤秀司さん プロ野球のレジェンド「名球会」連続インタビュー(30)
プロ野球というのは、こんな高いレベルでやってんのというのが第一印象。これに追い付いていこうと思うたら体がつぶれてまうなと、じっくり体力づくりをして環境に慣れてからでもいいんかなと思うたりした。2年目(35試合出場で打率3割3分3厘)は終わり頃に結構打って、その年のオフは12月末まで練習した思い出があります。 西本幸雄監督に出会えなかったら、今はなかった。練習量と熱心さというか、つかまえたら離してくれない。室内練習場に打撃マシンが2台あって、一つは西本さんに指名されてマンツーマンで打った。西本さんにやらされた時は数は多くなってくるわね、どうしても。夜は夜で素振りやったりティーバッティングをやったり。風呂、飯、寝る、練習、その四つやね。練習は1日の半分。やっぱり若いから体力があったんかどうか知らんけど、しんどいとは思わんかった。 西本さんは、とにかく数を打たせた。細かな指導はあったけども、全体的にはずっと目の前で本人が見てるからサボれんというか息が抜けない。僕がサボる名人やったから、放っておったら何してるか分からんというのはあったと思います。罵声を浴びせられるのはしょっちゅうやった。でも、何で怒られたんだってことを、ことごとく説明してくれた。選手に納得させる力は、ものすごくあった。何でこんなんで怒られないかんねん、という不信感がありながら練習させられたら、やっぱり気持ちも入ってこない。納得してやるから身になったですよね。あの人の一番良いところは、そこじゃないですか。
巨人のV9時代は(日本シリーズで)5度戦って勝てずじまい。どこの球団もON(王貞治さん、長嶋茂雄さん)に打たれて優勝できなかったというのが多いんじゃないですか。(74年に)長嶋さんが引退し、これで阪急が日本一になれるって、みんな声をそろえて言ったんですから。案の定、翌年に日本一になっている。そりゃ王さん1人やもん。他の選手が悪いんじゃないけどね。 ▽打率重視で積み重なった犠牲フライ (70年代の強い時期は)みんなチャンスで打ったね。ほんで守りもしっかりしとった。外野に打球がいっても間を抜けないですもん。守備が下手なのはファースト(加藤さん)ぐらい。何でもそうなんだけど、スポーツは気持ちが入らんかったら全然良い仕事ができない。例えば1対10で負けていたら、こらもう勝てんわってなる。到底追い付かない点差でいくと気合も入ってこないんだけど、当時のチームは、ここでちょっと頑張ったら、あと1点取ったら勝ちになるんちゃうかなって最後まで望みが残るゲーム展開が多かった。だから強かったんちゃう? 接戦になるには何やっていったら、守りが良かったから違うかな。