「執念としたたかな戦略がある」 退陣・総裁選不出馬の岸田首相が自民党総裁選の裏で「虎視眈々と狙うこと」
■岸田首相が最後の役員会で語ったこと その岸田氏は、総裁選告示に先立ち現陣容での最後となった9月10日の党役員会で、3年間の政権運営について「歴史の分岐点とも言うべき大きな時代背景の中で数々の難局に向き合った3年間だったが、粒々辛苦の努力を重ね、成果を挙げることができた」と回顧し、各役員の協力への謝意を表明。 これに対し麻生氏は、岸田氏による日韓首脳会談や原子力政策の推進などを取り上げて労をねぎらうとともに、「さまざまな問題を十分に解決できる能力は圧倒的に自民党にあると確信している」と強調した。
ただ、この岸田、麻生両氏に菅氏を加えた「現・前・元首相」が、大乱戦の総裁選での「勝ち馬」探しに頭を悩ませているのは「党内周知の事実」(自民長老)でもある。 3氏とも「キングメーカーとして新政権での影響力行使を狙っている」(同)のは間違いないが、「その重要な場となる決選投票で、派閥解消を受けてそれぞれの配下の議員達が、“親分”の指示通りに動くかが見通せないことが3氏の“悩みの種”」(同)とみる向きが多い。
確かに菅氏は小泉陣営の“最高司令官”として振る舞っており、菅、小泉両氏のお膝元・神奈川の地方議員は「12日の告示後に党員名簿を渡され、(党員・党友に対する)支持要請電話の回数や結果などを、毎日菅事務所に報告している」と首をすくめる。 そもそも、2021年の前回総裁選で再選を目指していた菅氏は、想定していなかった岸田氏の“奇襲”で、あっという間に「戦う気力をなくした」と言われており、続投断念に追い込まれた。以来、復讐心をたぎらせてきた菅氏にとって、「今回はまさに岸田氏との雌雄を決するリベンジマッチ」(無派閥ベテラン)とみられているのだ。
■麻生氏は急上昇の高市氏が“救いの神”にも そうした中、唯一派閥を存続させて総裁選に臨んだ麻生氏は「小泉氏は人気先行だ。(総裁選討論会での発言をみれば)あのままでは国会審議で行き詰まりかねない」と周辺に漏らしているという ただ、今回の総裁選で同派所属議員たちは、“同派代表”の河野氏以外に、複数の議員が上川、小林両氏らの陣営にはせ参じており、「完全に分裂状態」(派若手)だ。しかも、麻生氏の“石破嫌い”も続いているため、「麻生氏自身が、総裁選戦略を決めかねている」(同)のが実態とみられている。