「育成でもプロに行くべきか」「大学に進んでプロを目指すべきか」 ドラフト候補がリーガ・サマーキャンプで出した答えは?
田上が迷うのは、ここまでのキャリアとも関係がある。中学から高校に進む際、関西の強豪校から声をかけられた。だがその学校に進んで、はたして出場機会を十分に得られるのか。自信がなかったことに加え、八幡商業に進めば宮地穂高氏などメカニクスの指導に優れるコーチがいることも魅力だった。そうして自ら決断し、現在に至っている。 卒業後の進路に迷うなかでリーガ・サマーキャンプにやって来て、貴重な情報も得られた。第一候補に考えている大学の評判を、その地域の選手たちに聞くことができたのだ。 「『ピッチャーの育成がいい』という話でした。野手は年によってばらつきがあるみたいです。自分はピッチャーとして行きたいと思っています。自分の実力に見合わないチームに行き、もし投げられずに埋もれてしまったら、目指すものも目指せなくなる。プロに行くなら、大学で投げてナンボだと思っています」 【ドラフト候補から受けた刺激】 兵庫県の甲南高校で左腕投手&強打の外野手として活躍し、系列の甲南大学に進学予定なのが横田心大だ。 「高校に入学して2週目くらいにヒジの手術を受けて、今年の3月までずっとケガしていました。試合に出たのは代打の1打席くらいで、柔道部に行こうかと迷った時期もあります。ピッチャーの場数を踏めていない状態で、そのまま大学に行くのもどうなのかなと思って、リーガ・サマーキャンプに来ました。実戦で投げられるので、次へのステップアップという意味でもいいなと。みんなのレベルも高くてよかったです」 高校の公式戦に登板したのは最後の夏だけだったが、リーガ・サマーキャンプでは1番ピッチャーで先発するなど二刀流として躍動した。イキイキとプレーする横田を見ながら、リーガ・サマーキャンプの運営担当で大阪府立門真なみはや高校の藤本祐貴監督は"上"への意識を高めたのではと見ている。
「横田には漠然とプロに行きたいという思いもあったかもしれないけど、リーガ・サマーキャンプに来てさらに強くなっていると思います。ピッチャーでプロをはっきりと意識して来たのは3人くらいだったと思いますが、ほかの選手たちもコミュニケーションを取るなかで『オレも行きたい』となったはず。『育成だったらどうする?』という会話もありましたし。プロのスカウトが視察に来るなど同級生があれだけ注目されている姿を見て、周りにも刺激になっているはずです」 実際、横田はどう感じたのだろうか。 「田上くんも澁谷くんもすごくいいピッチャーなので、刺激を受けました。考えていることのレベルが高いので、負けてられないと感じました。マウンドさばきを見ていると、やっぱりエースやなと。ものすごく感じましたね」 リーガ・サマーキャンプを"次のステージへの架け橋"と捉えて参加した横田は、その先がより明確になった。 「もちろん4年後、プロに行きます。それを一番の目標にしてやっています」 高校卒業後、たとえ育成でもプロに行くべきか。大学に進んで力を蓄えてから上の世界を目指したほうがいいのか。人生の大きな決断は簡単に下せないだろう。だからこそ、多くの立場の人に話を聞いたほうがいい。 そうした意味でも、高校3年生たちにとって多種多様な人たちの集まるリーガ・サマーキャンプは貴重な機会になった。
中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke