【ナゼ】“保守分裂&裏金対決”二階VS世耕に“意外な大差”がついたワケ…比例復活すら許さない圧勝劇の背景
■世耕氏“余裕”の源泉は…ちらつく故・安倍晋三元首相の存在
「無所属、新人の世耕弘成でございます」 一方の世耕氏。第一声では、「政治資金の問題で大きな失敗をし、地元の皆さんに恥ずかしい思いをさせてしまい申し訳ない。離党勧告を黙って受け入れ、裸一貫で活動している」と謝罪。その上で、官房副長官や経産相、参院自民幹事長の経験と人脈をアピールして即戦力を強調した。 「26年の政治経験、特に後半の11年は、普通の議員にはできない密度の濃い経験をした。その経験を生かしてもう一度和歌山のために働かせていただきたい」 “裸一貫”を演出したかったのだろうか。別の会場ではミカン箱の上で演説を行い、選挙戦で履き続ける相棒のスニーカーは、靴のサイズが同じだった安倍晋三元首相の形見であると明かした。二階氏側に石破茂首相や森山裕幹事長ら党幹部が相次いで駆けつけるのを横目に、安倍明恵夫人や評論家の金美齢氏、山本一太群馬県知事らを独自の人脈で招いた。良くも悪くも父親の二階元幹事長の威光がちらつく伸康氏に対し、対立軸として安倍氏の存在を想起させる演出のようにも見えた。 演説会場を訪れる人の数は「組織戦」の二階氏に及ばないものの、自らの意思で足を運んだ聴衆の反応は良い。深々と帽子をかぶったマスク姿の男性は、建設会社の社員だといい、「こっちに来るのがバレるとまずいから"変装"してきた」と打ち明けた。 世耕氏自身も『出直し』と位置付けている割には、悲壮感は漂わせず、終始、弁舌滑らかに語り続けた。「それだけ、結果に自信があるということだ」と、世耕氏に付いた地方議員の一人が心境を代弁した。
■「ハードの二階」
2人の“保守”政治家の違いはどこにあり、有権者は何を期待しているのか。紀伊半島の南東部に位置する新宮市で行われた双方の街頭演説で、その一端が垣間見えた。 市の人口は約2万6000人。かつて紀伊山地で切り出された木材の一大集積地として栄えたが、現在は過疎化の影響で急速に人口減少が進む。航空機や特急列車、高速道路など様々な交通手段を駆使しても、大阪、名古屋、東京への所要時間はいずれも4時間前後かかり、乗り合わせたタクシーの運転手は、「本州最後の陸の孤島」と自嘲気味に話した。 国の想定では、南海トラフ巨大地震が発生した場合、5分後に3メートルの津波が到達する見込みだ。地形的に「半島の先端」であるため、災害時には、能登半島地震と同様に交通網の寸断が復旧復興の妨げになるとの懸念の声も上がり始めている。 「熊野(川)河口大橋も開通する運びになりました。これも新宮のみなさんのおかげです。だけどこれから、まだまだ私たちにはやらないといけないことがあります」 新宮市役所前で行われた二階氏の街頭演説で、伸康氏本人の到着前に実兄の俊樹氏が地声で語り始めた。引き合いに出した橋は新宮市と熊野川を挟んで対岸に位置する三重県紀宝町を結ぶ高規格道路だ。完成すれば、父親の二階元幹事長が長年公約に掲げてきた「紀伊半島一周高速道路」の一部となる。 父・二階元幹事長は今年3月の不出馬会見で国会議員を目指した動機について、「県議時代に地元の青年団から『これから新潟に行く。道路の要望を何十年も地元の国会議員に頼んだが一歩も動かない。痛みを分かってくれるのは田中角栄先生しかいない』と言われて悔しい思いだった。故郷のみんなにこんな思いをさせてはいけないと、国政に挑戦することを誓った」と振り返った。 悲願の「紀伊半島一周道路」は最終区間も着工し、全通へのカウントダウンが始まっている。災害時の新たな避難経路としても期待され、道路は二階家にとって「1丁目1番地」なのだ。